8.4.検定の例

8.4.1.母平均の検定

(1)両側検定の場合

製品をn=10個抜き取り、長さを測ったところ、平均\( \bar{X} \)=10.1cm、不偏分散から求めた標準偏差\( s \)=0.15cmだったとします。 このとき「製品の要求長さ10cm」に対して要求どおりといえるか?確認してみます。
前提として、製品の長さは正規分布\( N(\mu,\sigma^2) \)に従い、5%の有意水準で検定を行います。

まず、仮説として「製品の長さは要求どおり10cmである」とします。 今わかっている平均10.1cm、標準偏差0.15cmは標本の値です。 このとき、次の統計量\( t \)は平均の推定(7.4.2節)で見たt分布に従います。
\[ t = \frac{ \bar{X} - \mu}{s/\sqrt{n}} \]
そこでt分布表から、自由度9(=10-1)、片側2.5%(両側で5%)の値を拾ってくると、2.26になります。

検定

次に、\( t \)の式にそれぞれの値を代入すると\( t=2.11 \)となり、\( -2.26 \leq t \leq 2.26 \)となるため棄却域に入りません。
\[ t = \frac{10.1-10 \quad }{0.15 / \sqrt{10} } =2.11 \]
従って仮説は棄却できません (ただし8.2節で見たように、製品は要求通りだ!と断言まではできません)。

(2)方側検定の場合

先ほどの例に対して、今度は「製品の長さを10cm以下にする」という要求にこたえられているか?を確認します。

この場合も仮説として「製品の長さは10cmである」とします。
先ほどの例と異なるのは「10cm以上だと問題あり」になるので、右片側検定になることです。 従って、t分布表から自由度9(=10-1)、片側5%の値を拾ってくると、1.83になります。

検定

\( t \)の値は先ほどと同じ\( t=2.11 \)なので、\( 1.83 \leq t \)となって、この場合は棄却域に入ります。 従ってこの場合、仮説は棄却され「製品の長さは要求どおりではない」と判断されます。

8.4.2.母分散の検定

例年収穫するいちご1粒の重さが平均\( mu \)=50g、標準偏差\( \sigma \)=5gだとします。 今年、25個のいちごの1粒の重さが平均\( \bar{X} \)=53gで標準偏差\( s \)=7gだったとすると、今年のいちごは例年と同じような粒ぞろいといえるでしょうか?
前提として、いちごの重さは正規分布\( N(\mu,\sigma^2) \)に従い、5%の有意水準で検定を行います。

仮説として「例年どおり粒ぞろいである」とします。つまり母分散は\( \sigma^2 = 25 \)とします。 対立仮説として「\( \sigma^2 \neq 25 \)」とします。 このとき、次の統計量\( \chi^2 \)は分散の推定(7.4.3節)で見た\( \chi^2 \)分布に従います。
\[ \chi = \frac{(n-1) s^2}{\sigma^2} \]
そこで\( \chi^2 \)分布表から、自由度24(=25-1)、片側2.5%(両側で5%)の値を拾ってくると、左側=12.4、右側=39.4になります。

検定

次に、\( \chi^2 \)の式にそれぞれの値を代入すると\( \chi^2 =47.0 \)で、\( 39.4 \leq \chi^2 \)となり棄却域に入ります。
\[ \]
従って仮説は棄却され、今年のいちごはいつもよりも粒がばらついている、と判断します。

もし\( n=10 \)とすると\( \chi^2=17.6 \)となり、棄却域に対して\( 2.70 \leq \chi^2 \leq 19.0 \)となるため、仮説は棄却されません。 つまり、\( n \)数によって判断は変わる、ということになります。

      

参考文献