2.3.一般力
2.3.1.ハミルトンの原理
(2.1-7)式や(2.2.2-3)式によって、ラグランジュ方程式とニュートンの運動方程式が同じであることがわかりました。
\[
m \frac{d \bf{v}}{dt}
=
\bf{F}
\ \leftrightarrow \
\frac{d}{dt}\left( \frac{\partial T}{\partial \bf{v}} \right)
=
\bf{F}
\tag{2.3.1-1}
\]
ここで、質点系に微小変位δ
r(慣性系成分δx
i)を与えたとき、力の項は仕事を与えます。
\[
W
=
\bf{F} \cdot \delta \bf{r}
=
\sum_{i=1}^s F_i \delta x_i
\tag{2.3.1-2}
\]
今、慣性の法則、つまり最小作用の原理を満たす質点の軌跡を
x、それを通る運動エネルギーをTとし、そこからほんの少しずれた軌跡
x+δ
xを通るときの運動エネルギーをT’=T+δTとします。
慣性系から見た自由な質点は、(1.3-5)式でL=Tとすればよく
\[
\delta I
=
\int_{t_a}^{t_b} \delta T dt
=
- \int_{t_a}^{t_b} \delta q_i \frac{d}{dt} \left( \frac{\partial T}{\partial \dot{q_i}} \right) dt
=
0
\tag{2.3.1-3}
\]
また、運動方程式(2.3.1-1)式から
\[
\int_{t_a}^{t_b} \delta q_i \frac{d}{dt} \left( \frac{\partial T}{\partial \dot{q_i}} \right) dt
=
\int_{t_a}^{t_b} \delta \bf{r} \cdot \bf{F} dt
=
\int_{t_a}^{t_b} W dt
\tag{2.3.1-4}
\]
であり、結局
\[
\delta I
=
\int_{t_a}^{t_b} W dt
\tag{2.3.1-5}
\]
となります。
よって、運動エネルギーと仕事の間にある次の関係式が得られます。
\[
\int_{t_a}^{t_b} ( \delta T + W ) dt
=
0
\tag{2.3.1-6}
\]
この関係を
ハミルトンの原理と呼びます。
ハミルトンの原理は最小作用の原理を一般化したものと考えられます。
特に、最小作用の原理を満足する質点の運動は、自由な質点の運動であり、外部からの質点への作用は“0”です。
それに対し、そこから少しずれた軌跡を質点が通ろうとすると、外部からの仕事(力)が必要になることを表しています。
また、力がポテンシャルのみの場合W=-Uとなることから(2.3.1-6)式は
\[
\int_{t_a}^{t_b} ( \delta T - \delta U ) dt
=
\int_{t_a}^{t_b} \delta L dt
=
0
\tag{2.3.1-7}
\]
となり、
2.2節の内容を満足することがわかります。
なお、ハミルトンの原理に関する詳細な説明は、こちらの参考書をご確認ください。
2.3.2.一般力
前節は、慣性系から見た運動を用いて議論を進めました。
そこで、今度は慣性系から一般座標系へ話を拡張していきます。
まずは、仕事Wを与える力
Fの座標変換について考えます。
各質点の慣性系における微小変位δx
iと一般座標δq
jの関係は
1.1節に従い、
\[
\delta x_i
=
\sum_{j=1}^s \frac{\partial x_i}{\partial q_j} \delta q_j
\tag{2.3.2-1}
\]
すると、仕事Wは
\[
W
=
\sum_{j=1}^s F_i \delta x_i
=
\sum_{i=1}^s \sum_{j=1}^s F_i \frac{\partial x_i}{\partial q_j} \delta q_j
\tag{2.3.2-2}
\]
で表せます。
ここで新たなパラメータQ
jを次式で定義すれば、
\[
Q_j
=
\sum_{i=1}^s F_i \frac{\partial x_i}{\partial q_j}
\tag{2.3.2-3}
\]
Wを一般座標によって表すことができます。
\[
W
=
\sum_{j=1}^s Q_j \delta q_j
\tag{2.3.2-4}
\]
このとき定義したQ
jを
一般力と呼びます。
注意点として、一般力は力の次元を持つとは限りません
(例えば、Qにモーメント、δqに角度の変分を与えても成り立ちます)。
ここで、ハミルトンの原理を一般座標に拡張します。
一般座標における運動エネルギーTは速度だけの関数ではないため、作用Iの変化は
\[
\delta I
=
\int_{t_a}^{t_b} \delta T dt
=
- \int_{t_a}^{t_b} \delta q_i
\left\{
\frac{\partial T}{\partial q_i} - \frac{d}{dt} \left( \frac{\partial T}{\partial \dot{q_i}} \right)
\right\} dt
=
0
\tag{2.3.2-5}
\]
それに対し、
\[
W
=
\sum_{i=1}^s F_i \delta x_i
=
\sum_{j=1}^s Q_j \delta q_j
\tag{2.3.2-6}
\]
であることから、(2.3.1-5)式の形は不変です。
結局、(2.3.1-6)式の形は不変であり、一般座標でもハミルトンの原理はそのまま成り立ちます。
一般力の説明については、こちらの本がわかりやすいと思います。