3.フーリエ級数の収束性
関数\( f(x) \)が積分可能ならフーリエ係数を算出できるので、フーリエ級数を作ることができます。
このとき、
- フーリエ級数が\( \small{f(x)} \)に収束するかどうか?
- 収束するなら、その条件はどういったものか?
が、フーリエ級数の性質を知る上で重要になります。
そこで関数\( f(x) \)が区間[a,b]で積分可能として、フーリエ級数の\( f(x) \)への収束性を次の場合に分けて考えます。
関数\(\small{f(x)} \)の性質 |
フーリエ級数の収束性 |
連続 |
滑らか |
周期関数 |
一様収束 |
≠周期関数 |
端点除いて一様収束 |
区分的に滑らか |
不連続点除いて一様収束 |
いたるところ滑らかでない |
?(例:ワイエルシュトラス関数) |
不連続 |
区分的滑らか |
不連続点除いて一様収束 |
いたるところ滑らかでない |
? |
なお、連続かつ滑らかで周期関数でない場合は、区間を変えれば区分的に滑らかな場合と同じに扱えるので、実質
- 滑らかな周期関数の収束
- 区分的に連続かつ滑らかな関数の収束
の2ケースについて考えることとします。
3.1.三角関数の直交性
まずは三角関数系の直交性について確認します。
三角関数は周期\( 2 \pi \)の関数のため、(2.1-1)式の積分範囲を[0,\( 2 \pi \)]とします。
\[
(f,g)
=
\int_{0}^{ 2 \pi } f(x)g(x)dx
=
0
\]
上式を三角関数に適用していきます。
本項では三角関数の倍角公式を使いますので、以下に記しておきます。
\[
\begin{align}
& \cos ( \alpha + \beta)
=
\cos \alpha \cos \beta - \sin \alpha \sin \beta
\\
& \cos ( \alpha - \beta)
=
\cos \alpha \cos \beta + \sin \alpha \sin \beta
\\
\\
& \sin ( \alpha + \beta)
=
\sin \alpha \cos \beta + \cos \alpha \sin \beta
\\
& \sin ( \alpha - \beta)
=
\sin \alpha \cos \beta - \cos \alpha \sin \beta
\\
\\
& \displaystyle \cos \ ^2 \alpha
=
\frac{1+ \cos 2 \alpha}{2}
\\
& \displaystyle \sin \ ^2 \alpha
=
\frac{1- \cos 2 \alpha}{2}
\end{align}
\]
(1)余弦×正弦の場合
\[
\int_{0}^{2\pi} \cos (mx) \sin (nx) dx
=
\frac{1}{2} \int_{0}^{2\pi} \{ \sin(n+m)x - \sin (n-m)x \} dx
= 0
\]
(2)余弦×余弦、正弦×正弦で\(m \neq n \)の場合
\[
\begin{align}
& \int_{0}^{2\pi} \cos (mx) \cos (nx) dx
=
\frac{1}{2} \int_{0}^{2\pi} \{ \cos(n+m)x + \cos (n-m)x \} dx
= 0
\\
& \int_{0}^{2\pi} \sin (mx) \sin (nx) dx
=
\frac{1}{2} \int_{0}^{2\pi} \{ \cos(n+m)x - \cos (n-m)x \} dx
= 0
\end{align}
\]
(3)余弦×余弦、正弦×正弦で\( m=n \)の場合
\[
\begin{align}
& \int_{0}^{2\pi} \cos (mx) ^2 dx
=
\frac{1}{2} \int_{0}^{2\pi} \{ 1 + \cos (2m)x \} dx
= \pi
\\
& \int_{0}^{2\pi} \sin (mx) ^2 dx
=
\frac{1}{2} \int_{0}^{2\pi} \{ 1 - \cos (2m)x \} dx
= \pi
\end{align}
\]
まとめると次のようになります。
\[
\begin{align}
& \int_{0}^{2\pi} \cos (mx) \sin (nx) dx = 0
\\
& \int_{0}^{2\pi} \cos (mx) \cos (nx) dx
=
\begin{cases}
0 & ( m \neq n)
\\
\pi & ( m=n \neq 0)
\\
2 \pi & (m=n=0)
\end{cases}
\\
& \int_{0}^{2\pi} \sin (mx) \sin (nx) dx
=
\begin{cases}
0 & ( m \neq n \ or \ m=n=0)
\\
\pi & ( m=n \neq 0)
\end{cases}
\end{align}
\tag{3.1-1}
\]
以上の結果、三角関数系\( \{ 1, \cos x, \sin x, \ldots , \cos nx, \sin nx \} \)は直交しているが、正規化はされていません。
正規直交関数系にするためには、
\[
\left\{
\frac{1}{\sqrt{2\pi}}, \frac{\cos x}{\sqrt{\pi}}, \frac{\sin x}{\sqrt{\pi}},
\ldots
, \frac{\cos nx}{\sqrt{n\pi}}, \frac{\sin nx}{\sqrt{n\pi}}
\right\}
\]
とすればよいことになります。