2.4.一般化フーリエ級数
フーリエ級数が三角関数系による級数であるのに対し、一般化フーリエ級数は正規直交関数系による級数です。
区間[a,b]上で正規直交関数系\( \{ p_n(x) \}_{n \in N} \ \)が定義されているとします。
このとき区間[a,b]で定義される関数\( f(x) \)が正規直交関数系\( \{ p_n(x) \}_{n \in N} \ \)によって級数展開できるとき、
\[
f(x)
=
c_1 p_1(x) + \ldots + c_n p_n(x) + \ldots
=
\sum_{n=1}^{\infty} c_n p_n(x)
\tag{2.4-1}
\]
上式が項別積分可能な場合、以下が成り立ちます。
\[
\begin{align}
(f,p_n)
& =
\int_{a}^{b} f(x) p_n(x) dx
\\
& =
\int_{a}^{b} \sum_{n=1}^{\infty} c_n p_n(x) p_n(x) dx
\\
& =
\int_{a}^{b} c_n p_n(x) p_n(x) dx
\\
& =
c_n
\end{align}
\tag{2.4-2}
\]
これらをまとめて書いて、級数を
一般化フーリエ級数、その係数\( c_n \)を
一般化フーリエ係数と呼びます。
\[
\begin{align}
& f(x) = \sum_{k=1}^{\infty} c_k p_k(x)
\\
& c_n = (f, p_n)
\end{align}
\tag{2.4-3}
\]
2.5.完備条件(パーセバルの等式)
区間[a,b]で積分可能な任意関数\( f(x) \)、正規直交関数系\( \{ p_n(x) \}_{n \in N} \ \)が与えられたとします。
今、任意の係数\(r_i\)と\( \{ p_n(x) \}_{n \in N} \ \)を用いて有限級数\( g_n(x) \)をつくって、関数\(f(x)\)を近似します。
\[
g_n(x) = \sum_{i=1}^{\infty} r_i p_i(x)
\tag{2.5-1}
\]
このとき、有限級数\( g_n(x) \)の\( f(x) \)への近似度合いを測る評価関数として、次に示す(平均二乗)誤差関数を定義します。
\[
E \left\{f(x)-s_n(x) \right\}
=
\int_{a}^{b} \left\{ f(x) - g_n(x) \right\} \ ^2 dx
\geqq 0
\tag{2.5-2}
\]
図2.5-1 誤差関数
\( E \geqq 0 \)が成り立つのは、\(f(x)\)と\(g_n(x)\)の差分を二乗して積分していることから明らかです。
従って、Eが小さいほど\(g_n(x)\)は\(f(x)\)を良好に近似することになるので、Eを最小とする条件を求めます。
そこで、誤差関数\( E \)を変形していきます。
\[
\begin{align}
E
& =
\int_{a}^{b} \left\{ f(x)^2
- 2\sum_{i=1}^{n} r_i f(x) p_i(x)
+ \left( \sum_{i=1}^{n} r_i p_i(x) \right)
\left( \sum_{j=1}^{n} r_j p_j(x) \right)
\right\} dx
\\
& =
(f,f) - 2\sum_{i=1}^{n} r_i (f,p_i) +
\int_{a}^{b}
\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{n} r_i r_j p_i(x) p_j(x) dx
\\
& =
(f,f) - 2\sum_{i=1}^{n} r_i (f,p_i) +
\sum_{i=1}^{n} r_i^2 (p_i,p_i)+ \sum_{i \neq j} r_i r_j ( p_i, p_j)
\\
& =
(f,f) - 2\sum_{i=1}^{n} r_i (f,p_i) + \sum_{i=1}^{n} r_i^2
\qquad ( \because (p_i,p_j) = \delta_{ij} )
\\
& =
(f,f) - \sum_{i=1}^{n} (f,p_i)^2 + \sum_{i=1}^{n} \{ (f,p_i) - r_i \}^2
\geqq 0
\end{align}
\]
\( E \)は\( r_i = (f,p_i) \)のとき最小で、このとき\(g_n(x)\)は\(f(x)\)の最良近似となります。
\[
(f,f)
\geqq
\sum_{i=1}^{n} (f,p_i)^2
\tag{2.5-3}
\]
この係数\( (f,p_i) \)は一般化フーリエ係数\( c_i \)(
2.4節(2.4-3)式)そのものなので、\( E \)を最小とする条件は\( r_i \)がフーリエ係数\( c_i \)と一致するとき、つまり\( g_n(x) \)がフーリエ級数の部分級数のときになります。
\[
s_n(x)
=
\sum_{i=1}^{n} c_i p_i(x)
\]
また、このとき次の不等式が成り立ちます。
\[
(f,f)
\geqq
\sum_{i=1}^{n} c_i^2
\]
さらに任意のnについて成り立つことから\( n \rightarrow \infty \)でも上式は成り立ち、
\[
(f,f)
\geqq
\sum_{n=1}^{\infty} c_n^2
\tag{2.5-4}
\]
を
ベッセルの不等式と呼びます。
またこのときの級数\(s_{\infty}(x)\)は
2.4節で定義されたフーリエ級数そのものになります。
\[
s_{\infty}(x)
=
\sum_{n=1}^{\infty} c_n p_n(x)
\]
特に等式条件が成り立つとき、
パーセバルの等式と呼びます。
\[
(f,f)
=
\sum_{n=1}^{\infty} c_n^2
\tag{2.5-5}
\]
この結果、Eを最小にする級数、つまり\(f(x)\)の最良近似はフーリエ級数\(s_{\infty}(x)\)である、ということが言えます。
\[
E
=
\int_{a}^{b} \left\{f(x) - s_{\infty}(x) \right\} \ ^2 dx
= 0
\tag{2.5-6}
\]
上式が成り立つとき、\(s_{\infty}(x)\)は\(f(x)\)に
平均収束する、といいいます。
フーリエ級数\(s_{\infty}(x)\)が\(f(x)\)に平均収束するからといって、各点収束(さらには一様収束)するとは限りません
(例えば、不連続点では\(s_{\infty}(x)\)は\(f(x)\)に収束しません)。
とはいえ、この条件を少なくとも満足しなければ\(s_{\infty}(x)\)が\(f(x)\)に収束する可能性はありません。
さて、パーセバルの等式成立下で\(c_1=c_2= \cdots =0 \)とすると、(2.5-5)式と
2.1節から\((f,f)=0 \rightarrow f(x)=0\)が得られるので、
\[
\int_{a}^{b} \left\{ s_{\infty}(x) \right\} \ ^2 dx
=
0
\
\rightarrow
\
\sum_{i=1}^{\infty} c_i p_i(x)
=
0
\]
となって、正規直交関数系\( \{ p_n(x) \}_{n \in N} \ \)の線型結合(一次結合)は0になります。
また\( p_1(x),\ldots,p_n(x),\ldots \)は0でないので、\(s_{\infty}(x)=0\)になるためには\(c_1=c_2= \cdots =0 \)でなければなりません。
従って、パーセバルの等式が成り立つ、ということは正規直交関数系\( \{ p_n(x) \}_{n \in N} \ \)が線型独立であることを意味します。
このとき、正規直交関数系\( \{ p_n(x) \}_{n \in N} \ \)は
完備または
完全であるといい、パーセバルの等式を
完備条件とも言います。