6.スプラインの強さ(暫定)

スプラインの設計では、次の三点の強度について確認します。
  • 歯面圧
  • 軸ねじり強度
  • 歯元強度(外歯)
これらは、本サイトのWebアプリ:スプライン設計計算ページで計算できます。

6.1.歯面圧

トルク伝達時に発生するスプライン噛合い部の接触面圧は、次式で簡易的に計算します。

材料の許容面圧\( = \displaystyle \frac { T_q } { \eta H L Z d_p } \)
\( T_q \):軸トルク、\( \eta \):噛合い率、\( H \):噛合い歯丈、\( L \):噛合い長さ、\( d_p \):ピッチ円直径

噛み合い率は、接触している歯数の有効率、接触面積の効率などを加味した値になります。 この値は、使用条件(例えば摺動条件など)や自社の考え方等を考慮した上で決定することになります。

6.2.軸ねじり強度

スプライン軸のねじり強度は、外歯の歯底円上に発生するねじり応力(せん断)で評価します。 計算式は以下のとおりです。
\[ \tau = \frac{ 16 T_q }{ \pi } \left( \frac{ 1.24 }{ D_r } \right)^3 \]
\( T_q \):軸トルク、\( D_r \):歯底円直径

6.3.歯元強度

スプラインの歯元応力を計算する際の入力荷重は、通常の歯車とは異なります。 それは接触形態が異なるためです。

図6.3-1 スプラインの接触形態
図6.3-1 スプラインの接触形態

そこで、本サイトでは入力荷重を次のように考えて算出します。
接触歯面上で均一にトルクは作用するものとして、接触面を径方向に微小分割したとき、その微小域に作用するトルク\( d T_r \)は次式で表せます。

図6.3-2 接触面に掛かる力
図6.3-2 接触面に掛かる力

\[ dT_r = \frac{ T_q dR }{ R_1 - R_0 } \] 従って、微小域の半径を\( R \)とすれば、その領域に作用する力\( d F_r \)は、上式をRで割ればよく \[ dF_r = \frac{ T_q dR }{ R ( R_1 - R_0 ) } \] となります。 これを接触範囲で積分すれば、歯面に作用する力が求まります。 \[ F_r = \int_{R_0}^{R_1} \frac{ T_q dR }{ R ( R_1 - R_0 ) } = \frac{ T_q }{ R_1 - R_0 } \log \left( \frac{ R_1 }{ R_0 } \right) \] 力の作用点は簡易的に \[ R_f = ( R_1 + R_0 ) / 2 \] とします。
次に、歯元応力を算出する断面(=危険断面)を決定します。 本サイトでは、一般的に用いられるHOFERの30°接線法を用います。
危険断面はwebアプリ:スプライン設計計算ページで計算できますので、試してみてください。

図6.3-3 歯元危険断面
図6.3-3 歯元危険断面

この危険断面に接する円の半径\( R_c \)と\( R_f \)との差をモーメント長\( e_f = R_f - R_c \)とします。 危険断面の断面係数を\( Z_c \)で表せば、歯元に発生する曲げ応力\( \sigma_b \)は次式で計算できます。 \[ \sigma_b = \frac{ F_r e_f }{ Z_c } \] さらに、危険断面には\( F_r \)によるせん断も作用するので、その応力\( \tau \)を危険断面\( A_c \)を用いて \[ \tau = \frac{ F_r }{ A_c } \] から求めます。
危険断面にはこの曲げ応力\( \sigma_b \)とせん断応力\( \tau \)が同時に作用するので、歯元応力\( \sigma_r \)を次式で求めます。 \[ \sigma_r = \sqrt { \sigma_b^2 + 2.5 \tau^2 } \] これらの計算は簡易的に行ったものですので、それを考慮にいれた安全率としたり、効率を設定することで結果の適正化を計ります。
以上で得られた歯元応力\( \sigma_r \)は、引張り降伏応力を超えないように設計します。 特に伝達トルクが変動する場合は、耐久限度線により評価することになります。
本節の内容に基づいたスプライン設計計算は、webアプリ:スプライン設計計算ページで行えます。ぜひ試してみてください。

7.スプラインの製造方法

スプラインやセレーションの製造方法は様々ありますが、主に次のものが挙げられます。
表6-1 スプラインの製造方法
対象 製造方法 特徴
一括成形 鍛造 外歯・内歯両方可能
スプラインの長さに制約あり
鋳造 外歯・内歯両方可能
精度にやや難あり
焼結
射出成型
大量生産 転造 外歯のみ
軸の剛性がないときは変形のため不可
ブローチ加工 内歯
スプラインが長いと歯すじ方向の精度に難あり
ホブ切り 外歯・内歯両方可能
高精度
小ロット・試作 NC加工 スプラインの長さに制約あり
ワイヤカット スプラインの長さに制約あり
止まり形状は加工不可
形彫り放電 電極が非常に高価
歯面がわずかにクレーターぽくなる

特に高負荷伝達を行う場合は、鉄系材料を用い熱処理を施します。 この場合、熱処理ひずみによる精度悪化が考えられます。軸側(外歯)は研磨等による修正が可能ですが、穴側(内歯)は手の施しようがありません。 内歯については事前に熱処理ひずみを補正するような形で歯形創成を行う必要があります。

インボリュートスプラインの検査項目は、その形状の特性上、平歯車と同じです。
  1. 軸:オーバーピン径、またぎ歯厚
  2. 穴:ビトウイーン径
  3. 歯形:歯形測定器


      

参考文献

スプラインやセレーションは、ねじや接着と同じように締結の一手段ですが、専門の解説書というのはなかなかありません。 インボリュート外歯車と内歯車を組み合わせて締結に使う、という点から歯車の書籍が参考になります。