3.4.円筒面シール

円筒面での使用は、固定用と運動用で設定が異なります。 通常運動用Oリングの線径は、ねじれ防止や圧縮永久歪みの抑制を目的として、固定用より太いものを選びます。 また運動用として使う場合は、摺動する際にOリング接触部で摩擦が生じます。 摩擦が大きくなることでエネルギーロスを招くことから、摩擦は極力抑える必要があります。

図3.4-1 円筒面シール 図3.4-1 円筒面シール
図3.4-1 円筒面シール

(1)Oリング線径

円筒面Oリングの線径は固定用と運動用で異なります。 それぞれのケースについて、下表のつぶし率\( \epsilon \)(3.2節(1))に収まることを目安に設定します。 なお、ピストン、ロッド共通です。

使用箇所 つぶし率
a)固定用 10~25%
b)油圧運動用 10~20%
c)空気圧運動用 8~18%

より詳細な設定については、JIS B 2041-2で線径に応じたつぶし率を細かく設定されていますので、そちらを参照ください。

図3.4-2 円筒面シール線径 図3.4-2 円筒面シール線径 図3.4-2 円筒面シール線径

(2)Oリング内径

a)ピストン溝用

Oリング内径\( d_1 \)が溝底径\( d_3 \)より大きいと、ロッド(シリンダ)への組み込み時にOリングが損傷したり、ねじれたりします。 従って、Oリング内径は溝底径より小さく設定します。 ただし、小さくし過ぎると線径が細るため、シール性の低下やストレスによる劣化が生じます。
Oリングの内径は、伸張率\( \alpha \)(3.2節(2))を用いた次式で求まります。
\[ d_1 = \frac{ d_3 }{ ( 1 + \alpha ) } \]

i)固定用

Oリング内径\( d_1 \)は、伸張率\( \alpha \)が2~8%になるよう設定します。

ii)運動用

Oリング内径\( d_1 \)は、伸張率\( \alpha \)は2%以上を目安とし、5%以下に保つよう設定します。

b)ロッド溝用

Oリング外径が溝底径(大径側)より大きくなるのはOリングのよれが生じることから望ましくありません。 極力規格で規定されているサイズを用いることが望ましい、といえます。 経験的に、Oリング内径\( d_1 \)と軸径\( d_9 \)が同じになるよう設定します。


また、JIS規格品以外でOリングの寸法を設定する場合、下表を参考に内径、線径の設定を行うのがよい、とされています。

a)ピストンシール

内径寸法
[mm]
最大伸張率
[%]
1.8~4.5 8
4.87~13.2 8
14~38.7 6
40~97.5 5
100~200 4
200~250 3

b)ロッドシール

内径寸法
[mm]
最大伸張率
[%]
3.75~10 8
10.6~25 6
25.8~60 5
61.5~125 4
180~250 3

(3)Oリング溝

図3.4-2 円筒面シール線径 図3.4-2 円筒面シール線径

Oリング溝の設定は、次のよう行います。
  • 溝深さ\( h \)は、(1)で見たOリングのつぶし率\( \epsilon \)(3.2節(1))をとれるよう設定します。 公差は+0.1, 0を基準とします。
  • 溝幅\( b_4 \)は、充填率\( \eta \)(3.2節(3))は60~75%程度を目安に、最大でも85%以下になるよう設定します。 公差は+0.2, 0を基準とします。 なお、対液体シール時はOリングの膨潤を考慮して、ガスシール時よりも若干大きく設定します (0.3~0.5mm程度)。
  • 溝底丸み\( r_1 \)は、太さ\( d_2 \)≤3.5のとき0.2~0.4mm、\( d_2 \)≤7のとき0.4~0.8mm、\( d_2 \)>7のとき0.8~1.2mmを目安とします。
  • 溝面取りは、C0.1~0.3、またはR0.1~0.3を目安とします。
  • 軸面取り\( z \)の角度は、15~20°とします。また、穴面取りの角度は30°とします。
  • Oリング溝の表面粗さは次表を目安に設定します。

固定用

圧力変動 接触面 溝側面
あり Ra0.8
(Rz3.2)
Ra1.6
(Rz6.3)
あり Ra1.6
(Rz6.3)
Ra1.6
(Rz6.3)

運動用

接触面 溝側面
Ra0.4
(Rz1.6)
Ra0.8
(Rz3.2)

3.5.オイルシールの材質

Oリング材料の選定は、温度、圧力、シール対象物質等の使用環境に応じて最適なものを選択します。

材質 記号 特徴
ニトリルゴム NBR 一般的な材料です。使用温度範囲はアクリルニトリル含有率によって異なりますが、-40~110℃程度が目安です。 幅広い用途で用いられます。
水素ニトリルゴム HNBR NBRの耐熱性、耐候性を向上させたものです。高温側は140℃程度まで向上しています。 NBR同様幅広い用途で用いられます。
アクリルゴム ACM NBRよりも耐熱性に優れ、耐油性も持ち合わせています。 水に対して膨潤に伴う軟化が生じることがあります。 また強度はNBRより劣ります。 使用温度範囲は-30~160℃程度が目安です。 自動車駆動系部品のシール、軸受シール等に用いられます。
シリコンゴム VMQ 耐熱性、耐寒性、耐潤滑油性、耐水性に優れます。 化学的に安定で、人体への影響を心配する必要はありません。 最も広い温度範囲に対応でき、使用温度範囲は-70~200℃程度になります。 ただし、機械的強度の低さと酸・アルカリによる加水分解が挙げられます。 安全性の理由から家電や医療機器、食品関連等に用いられます。
フッ素ゴム FKM 優れた耐熱性、耐油性、耐薬品性を持ちます。 使用温度範囲は-30~230℃と、最も高温環境に耐性があります。 自動車のエンジンまわり(高温)、化学工場の耐食パッキンで用いられます。
エチレンプロピレンゴム EPDM 耐オゾン性、耐熱性のほか、特に耐候性に優れます。 また、水や植物油に耐性を持ちますが、鉱物油への耐性はありません。 使用温度範囲は-50~150℃程度です。 耐候性と耐水性の観点から自動車のラジエタ、窓枠ゴムなどのシール材で用いられます。
クロロプレンゴム CR 強度、屈曲疲労性に優れる他、耐候性、耐熱性、耐油性、耐薬品性も有しています。 ただし低温では結晶化※しやすいため、低温環境での使用は不向きです。 使用温度範囲は-40~120℃程度です。 屈曲疲労の観点からベルトやホース、電線被覆などに用いられます。
ブチルゴム IIR 強度、耐候性、耐オゾン性に優れる他、ガス透過性が小さいのが特徴です。 一般工業用の耐油性に劣ることから、流体シール用としては用いられません。 タイヤのインナーチューブや電線被覆等に用いられます。
スチロールゴム PS エチレングリコール、ブレーキオイル、動植物油に対して優れた耐性を持つ材料です。

※:ゴムの結晶化により、その部分の剛性が高くなり、き裂や破断につながります。


材質選定に迷った場合や特殊条件で使用する場合は、シールメーカーに相談することを推奨します。

参考文献

シール材専門の書籍はなかなか見当たらず、あっても廃刊となっているものが多いようです。 JIS-B-2401、2402に実用方法に対する規格が記載されていますので、それをベースに設計することになります。