1.シールの種類と役割

シール(seal)は、密封装置とも呼ばれ、主に次に役割を担っています。
  • 液体や気体の漏れ防止
  • 装置内への異物侵入防止

シールは私たちの生活になくてはならない存在で、ガスや水道などのインフラ、家、家電、車、油圧機器、ロケットなど、ありとあらゆる分野で用いられています。 シールに不具合が生じると、場合によっては有害物質が外部へ漏れ出し、生活や環境に与える影響は非常に深刻です。 また、単に密封性(気密性)を上げればよいわけではありません。 回転部分や摺動部分をシールする場合、気密性を上げようとすればシールによる摩擦が増え、エネルギーロスを伴います。 したがって、機械や装置が要求する性能、使用条件を満足するよう、適切なシールの選定が機械設計者には求められます。
シールには様々な種類があり、固定用途で用いられるガスケットと、可動部で用いられるパッキンに大別されます。

図1-1 シールの分類
図1-1 シールの分類

上図のように、シールには数多くの種類があります。 ということはつまり、万能シールは存在せず、使用目的、環境などの条件に応じて適切な選択を行わなければなりません。 通常は各シールメーカーのカタログに使用条件や設計条件が掲載されていますので、そちらを参照して選定を行います。
シール選定において検討すべき主な項目を次に列挙します。

(1)機能・性能

気密性 流体の封入、異物侵入防止
摩擦 接触部に生じる回転や摺動抵抗
強度 シールの破損など
剛性 ねじれ、組付け性、変形など
硬度 シールの摩耗、相手面の摩耗など

(2)耐性

耐摩耗性 シール材や相手材の摩耗耐性
耐圧性
耐真空性
圧力への耐性(変形、強度など)
耐熱性
耐寒性
高温環境での不具合、低温環境での効果や脆性など
耐油性
耐水性
耐薬品性
油、水、薬品などに対する化学的安定性
耐候性
耐オゾン性
使用環境(機構、日照、オゾン)による劣化
膨潤性 液体がシール材に浸透して膨張
難燃性 燃えにくい材料
経年劣化 時間経過に伴う劣化
ガス透過性 シール材を透過する性質(分子間すり抜けなど)
アウトガス 真空環境で使用時、シール材が気化(脱ガス)する特性

(3)製造

材料の環境対応 環境に負荷を与える材料を使用しない
コスト シール材の値段、製造期間など

本サイトでは特に、スクイーズパッキンのうち“Oリング”と“オイルシール”について説明します。

2.スクイーズパッキン

2.1.スクイーズパッキンの分類

スクイーズパッキンは、断面を圧縮してつぶすことで気密性を保つものです。 スクイーズパッキンはゴム製のものと金属製のものに分かれ、それぞれに特徴があります。

ゴム製 金属製
用途 固定用、往復運動用、真空用など 固定用
圧力 ~25MPa 高真空~高圧力(300MPa)
温度 ゴム材料に応じた範囲 -60℃~250℃ 極低温(-270℃)~高温(800℃)
追従性 変形しやすく相手面追従性良好 ゴムほどの相手面追従性はない
耐薬品
耐油性
ゴム材料に応じて選択 耐性に優れる
耐劣化 紫外線硬化、膨潤等を生じる 材料の変質、劣化はない

一般的に特殊環境には金属製、通常はゴム製を使用します。 スクイーズパッキンを往復運動用で用いる場合、極微小な漏れ(リーク)は許容できる部分での使用に限定した方が良い、とされています。

2.2.ゴム製スクイーズパッキン

種類 形状 用途
Oリング Oリング 最も汎用的に用いられるパッキンで、低価格かつ入手が容易です。JIS B 2401で規格化されています。
Dリング Dリング Oリングに対し耐ねじれ性に優れているため、ねじれ対策で採用されるケースが多いパッキンです。主に往復部で用いられます。
Xリング Xリング 往復部や回転運動部で用いられるパッキンです。摺動特性や密封性に優れますが、剛性は低く、高圧部には適しません。 組付け時にねじれが発生しやすいのも欠点です。
Tリング Tリング 摺動性に優れたパッキンです。 バックアップリングとの併用で耐圧性も有することから、往復運動、低速回転、揺動部での使用が可能です。 ただし、上記シールに対し高価です。

本サイトでは、使用頻度の高いOリング(3章)について説明します。

2.3.金属製スクイーズパッキン

金属製のメリットには次のものが挙げられます。
  • 温度変化に対する耐性が高い
  • 高真空から高圧力まで対応できる
  • 耐薬品性に優れる
  • 材料の劣化がない

材料としてはステンレスやインコネル材が使われ、表面に銀やニッケル、PTFEのコーティングが施されています。 形状としては中空Oリング、Cリングなどがあります。それぞれの特徴については次表を参照ください。

※PTFE:ポリテトラフルオロエチレン(Poly Tetra Fluoro Ethylene)。 フッ素樹脂の一つ。



中空Oリング
単純型
単純型
真空~7MPa程度までの圧力範囲で使用します。
穴あき型
穴あき型
Oリング内部に流体圧力を作用させることで、高圧環境で利用できます。
圧力封入型
圧力封入型
Oリング内部に不活性ガスを封入し、高温下での強度や弾性の維持を目的としています。
Cリング
Cリング Oリングより低剛性な分相手面追従性が高く、締付荷重は小さくなります。

金属製スクイーズパッキンに対する注意点、特徴は次のとおりです。
  • シール部相手面の加工跡は、Oリングと同心円にします。
  • 一般的に表面粗さは、粘度の高い流体(潤滑油やグリス)のシールで3.2S程度、気体のシールで1.6S、真空用で0.8S程度を選択します。
  • 溝寸法、表面粗さ等の詳細は、各メーカー指定に従ってください。
  • 一度使用したパッキンの再使用は推奨されません。
  • 使用箇所とパッキンの洗浄を十分に行ってください。


参考文献

シール材専門の書籍はなかなか見当たらず、あっても廃刊となっているものが多いようです。 JIS-B-2401、2402に実用方法に対する規格が記載されていますので、それをベースに設計することになります。