1.ものづくりと設計者のかかわり

“ものづくり”には、 「社会に何かしらの価値を提供する」という目的が一般的に備わっています。 その価値を具現化するための“もの”を創り出すことが、設計者の役割です。

そもそも“設計”とは、構造体を諸条件に合わせて構築する作業です。 ここでいう構造体とは、建造物や機械といったハードウェアだけでなく、 プログラムや人生計画といったソフトウエアも含まれます。 こういった構造体=“もの”を、“造る側”と“使う側”の両方の条件について、 うまくバランスを取ながら具体的に形にしていくことが、設計者の仕事になります。 この「バランスをとりながら」というのが重要で、バランスをとるには振り子のように 振れながらなんとかある一点にとどまろうとします。 このときの振れは一意ではなく、人それぞれ、様々な振れ方をとるため、 設計者の意思がこの部分に反映されます。 そのため、設計者によって味の異なる製品が生まれてくる、ということになります。


上述のように、設計者は“もの”を創り出すことが仕事であるため、 ありとあらゆる工程に入り込む必要があります。

そこで下表に、各工程で行う内容と設計者が行う仕事についての一例を挙げます。


フェーズ 内容 設計の仕事
企画 どういった製品をつくれば、社会に価値を提供できるか? その目的と目標を設定。
  • 目的達成に必要な技術の調査
  • 目標値の設定
  • ポンチ絵の作成
仕様検討/
計画立案
  • 目的と目標を実現するために必要な機能・性能を具体的に設定(数値化)
  • サブシステム仕様をサプライヤーと調整
  • 開発費用/計画の策定
  • 機能・性能の数値化
  • サプライヤー調整
  • ポンチ絵の精度アップ
  • 設計工数見積もり
レイアウト
検討
  • 設定された仕様を達成するための、製品の構成・形状・材質を決定
  • 製法・組立性検討/コスト見積り
  • 製品安全性/信頼性検証
  • 全体システムとサブシステム間の整合性
  • 必要治工具検討
  • 性能計算/設計計算(強度、剛性、機構、熱、流体、公差解析、…)
  • 全体レイアウト作成
  • FTA/FMEA
  • サプライヤー調整
  • 治工具設計/仕様検討
図面作成 決定されたレイアウトをもとに
  • 各構成品の手配/納期設定
  • 検査/試験規格策定
  • 現場との整合
  • 各構成品の仕様書や図面(3D図含む)の作成
  • 組図/工程フロー/作業指示書作成
  • 検査規格書/試験規格書作成
  • 現場との調整
製造/組立/
検査/試験
  • 製品の製造・組立とばらつき把握
  • 製品が要求仕様について満足していることを確認
  • 製造物の出来栄え/ばらつき確認
  • 組立/検査/試験現場支援
  • 検査/試験データ評価
販売
保守/点検
  • 製品の販売と保守/点検
  • 市場トラブル対応/不具合調査
  • 売れ行きに合わせた製品仕様見直し
  • 市場トラブル改修対応
  • 使われ勝手調査
  • 製品寿命実力の把握
  • ↑開発へフィードバック

これは一つの例であり、設計者の考え方や、所属する企業の考え方によって変わりうるものです。


さて、このように設計者は単に3Dモデルや図面が描ければよいわけではなく、 あらゆる工程で必要となる情報を提供する必要があり、 さらにはそこで得られた情報を製品に反映していかなければなりません。

また、上表を見るとわかるように、設計者には非常に幅広い見識が求められます。 そこで本サイトでは、設計者にとってここは大事であろうと思われるポイントについて、 一例ではありますが示していこうと思います。


ただし、ここで紹介する内容はあくまで個人的な考えであって「こうでなければならない!」 というものではありません。 ここで示した内容が皆様にとって、「設計とはどうあるべきか?」を考えていただく機会となれば幸いです。


2.根本的な考え方

前章で述べたとおり、ものづくりには目的があり、 それを実現するための具体的な“もの”の姿を示すのが設計者の役目です。 製品の目的の一番は、何らかの形で人や社会を幸せにすることであり、 同時に自然へのダメージを極力少なくすることが求められます。


このような考え方に沿ってものづくりを行うために設計者は、 幅広い知識としっかりとした考え方(信念)を持たなければなりません。


図2-1 ものづくりに必要な土台となる見識
図2-1 ものづくりに必要な土台となる見識

上図を見ると、設計者にはありとあらゆる分野の見識を求められていますが、 実際これらをすべて完全に習得している人は、この世の中にはいません。 ですが、それぞれの専門家は世の中に大勢います。 このような専門家たちをうまく巻き込んで、チームとしてものづくりを行っていく必要があります。

設計者だけではなく、すべての人にとって、道徳・倫理観を身に付けておくのは言わずもがなです。 これを前提としたうえで、設計者は、特に“自然科学”“工学”を専門として、 他の分野については要点を押さえておけばよい、と考えています。 専門外分野の要点さえつかんでおけば、チーム内の情報共有が円滑に行え、 製品に様々な視点を反映させることができるはずです。 それにより、自然と調和し、人や社会に求められるものづくりが可能になる、と考えています。


3.設計者に必要な自然科学

3.1.自然科学の必要性

自然科学は主に数学、物理学、化学、生物学といった分野に分類されます。 特に後ろ3つは学校で“理科”として勉強したものです。

自然科学は、過去のあまたの人たちの経験、知識、考察がまとめられ、 数多くの実証と大多数の人たちから普遍的な理論として認められたものです。


自然科学の目標は、自然さらには宇宙の根源的な解明といっても過言ではありません。 この解明は未完であり、到達不能な目標かもしれません(きっとそうです)。 ですが、その追求の過程によって、私たちが経験し得ない過去のことまで推察できるようになりました。 実はこの時間の方向性を逆にすれば、未来についても私たちは予測することができます (完全ではありませんが)。

自然科学がものづくりにおいて力を発揮するのは、 まさにこの“未来の予測”と“過去の推察”によるところです。


では、ここで“未来の予測”と“過去の推察”がものづくりにおいてどのように有効に働くか? について見てみようと思います。


ものづくりを具現化する際、とりあえずまずは作ってみよう、ということで、 過去の経験や知識のみで行ってしまうことがあります。

製品によってはそれでよい場合もありますが、特に工業製品ではそれは現実的ではありません。 企業は製品を社会に提供する以上、安全性や信頼性を、 製品が使われる間に起きる様々な事象に対して担保しなければならない、 つまり未来の事象に対して、安全性や信頼性を担保する必要があるからです。 この未来の事象への保証に、自然科学の威力が発揮される、というわけです。

また、市場で発生したトラブル等を調査するには、すでに起きてしまった過去の事象を、 壊れた製品や聞き取り調査から推察しなければなりません。 ここでも過去の事象の推察に、自然科学の威力が発揮されることになります。


3.2.押さえておきたい自然科学のポイント

本サイトは機械設計がメインとなりますので、 それに関する自然科学の押さえておきたいポイントを提案していこうと思います。


機械設計で特に重要なのは、“数学”と“物理学”である、と考えられます。 そこで、下図に数学と物理学の中でも特に機械設計で活用度の高いものを、それぞれの関連性含めて示します。


図3.2-1 押さえておきたい自然科学のポイント
図3.2-1 押さえておきたい自然科学のポイント

この図の中で、数学の土台となる“集合論”と、物理学の土台となる“力学”はぜひ押さえておきたい分野になります。

特に力学については、ものづくりが物体にまつわる事象であることからしても 機械設計における根幹として位置付けてよいと考えられます。 また、物理学自体もこの力学を土台にいろいろな分野へ派生していきます。 従って、この力学を抑えた上で、いろいろな分野へ手を伸ばしていくのが良いと思います。 また、物理数学は物理を知る上で必要不可欠なツールです。特に図で挙げた微積分、ベクトル、行列計算は、 力学だけでなく、あらゆる物理学の分野で必要となる基礎知識にあたります。 力学を学ぶのと同時に手を伸ばしておく必要があると思います。

さらに、各分野の必要性については、ご担当されている専門分野に関するものを掘り下げていくのが良いと思います (例えば、冷却装置なら熱力学や流体力学)。 そうすると、必ず他の分野ともつながりながら理論構築されているのが見えてきますので、 それに合わせて幅を広げていけばよいと思います。


また、集合論については、整理整頓(実際は分類)の極意を理論的に述べていることから、機械設計ということではなく、 仕事全般の基本となりますので、ぜひ押さえておいていただきたい、と思います。


ここで、各分野において扱いやすい参考書を1つずつ紹介しておきます。 あまり難しいものはここでは紹介しませんが、良書と呼ばれるものは数多く存在します。 専門書の紹介 ページも参考にしていただければ、と思います。


<物理学>
力学 解析力学 流体力学 弾性理論
熱力学 統計力学 電磁力学 量子力学
捜索中です

数学
集合論 物理数学 確率・統計

3.3.その他知っておきたい自然科学

これまでは主に、数学と物理学をメインに話を進めてきました。 ですが実際は、化学や生物学に対する知識を持つことも重要になります。


例えば、機械設計においては、構成品の材料選択が重要な仕事になります。 この材料選択では、材料の性質についてより詳しく知っておくほうが良いことは明らかでしょう。 材料の性質は、材料を構成する元素の化学的性質に依存しています。 よって、化学的な知識を持ち合わせることで、知らない材料に出くわしても ある程度の推察が可能になるはずです。


また、機械にはそれぞれの用途に合わせた構造を持ち合わせています。 実は、生物もまたそれぞれの進化の過程で得られた構造を持っています。 非常に長い年月をかけて、自然環境に最適な形で適合するよう進化した結果を 拝借して機械に取り入れることは、理にかなった方法だと考えられます (例えばサメ肌を利用したスイムスーツとか)。 生物からは非常に多くのことを学ぶことができるはずです。


ここでは、次のような本を紹介しておきます。


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