1.質量と重量の違い

“質量”と“重量”は違います。
質量(mass) 慣性抵抗を表す物体固有の量
重量(weight) 物体に働く力の大きさ

質量は物体固有の普遍量(=スカラー)であるのに対し、重量は場所によって値が異なります。 有名な例えとして、地球で測った重量が月で測ると約1/6になる、という話があります。 これは地球上の重力加速度に対し、月面上の重力加速度が約1/6になることが理由です。
重力加速度とは、端的に言えば「地球上で物体を落下させたときの加速度」のことです。 これは万有引力の法則によって定まります。 地球上の重力加速度\( g_{earth} \ \)は、地球の質量\( M_{earth} \ \)と地球の半径\( R_{earth} \ \)を用いて \[ g_{earth} = G \frac {M_{earth}}{R_{earth}^2} \]
\( G \):万有引力定数

で表せます。 同様に、月面上の重力加速度\( g_{moon} \ \)は月の質量と大きさ(半径)から定まります。 月は地球より小さいことから、月の重力加速度が地球のそれより小さいことは容易に想像できます。
さて、重力加速度が定まれば重量が分かります。 重量は力と同じ意味ですから、質量mの測定対象を地球上で測った重量\( w_{earth} \ \)は
\[ w_{earth} = m g_{earth} \]
によって求まります。 この式からも明らかなように、質量と重量では単位も異なります。
質量(mass) kg
重量(weight) kgf(f:force)

※:kgfは昔の単位で、今は“N”(ニュートン)表記が原則です。

2.重力補正

私たちが体重を測るとき、体重計がさし示している値は重量です。 同じようにいろいろな重さを測るということは、重量=力を測っていることに他なりません。 残念ながら、質量を直接測ることはできません。 質量を知るには重量を測って、それを重力加速度で割らなければなりません。
ところで、地球上の重力加速度はどの場所でも同じかといえば、決してそうではありません。 単純に考えれば、海抜0mの重力加速度と富士山頂の重力加速度が異なることは、 その測定箇所と地球の中心までの距離が異なることから明らかです。 また、地球は完全な球体ではないためその扁平分も重力加速度の差異の原因となります。 さらには、緯度によっても変わります。 地球は自転しているので地球上には遠心力が働きます。 そのため計測した重量は、各地で生じる遠心力と万有引力の合力を測っていることになります。 従って、質量を知るにはその遠心力分の影響を差し引く必要が出てきます。
このように重力加速度は場所によって異なるため、その基準値は現在9.80665m/s2と規定されています。 各地の重力加速度を自ら計算して求めるのは手間ですので、国土地理院などで公開されている重力加速度データを用いるのがよいでしょう。
国土地理院: http://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/gravity_menu02.html

ここで、北海道で測った重量10kgfの物体の質量と、鹿児島で測った重量10kgfの物体の質量が違うかどうかを確認してみます。 重量は力そのものであり、重量[N]=質量[kg]×加速度[m/s2の関係が成り立ちます。 ところでいま重量の単位を[kgf]としているので、[N]に換算しなくてはなりません。 [kgf]→[N]への換算は、1[kgf] = 9.80665[N]という関係を用います。従って、
10[kgf] = 98.0665[N]

となります。ここで北海道での重力加速度は9.805ですから、質量は
\[ M_{北海道} = \frac { 98.0665 }{ 9.805 } = 10.002 [kg] \] となります。 今度は鹿児島について同じように計算してみると、鹿児島での重力加速度は9.795ですから
\[ M_{鹿児島} = \frac { 98.0665 }{ 9.795 } = 10.012[kg] \]
になります。このように別の場所で同じ重量であったとしても、必ずしも質量が同じとは限りません。 今回の例では重量が同じとしているので、重力加速度の大きい場所(北海道)の方が質量は軽くなります。 逆に質量が同じ場合であれば、北海道で測った重量の方が大きくなります。
このように、重量から質量を求める際、その測定場所の重力加速度を把握しておかなければ、 質量の正確な値を知ることはできません。 また、同じものを測っているのに質量が異なる場合は重量加速度の値が間違っていないか確認する必要があります (測定値は正しいと仮定した場合)。 測定箇所で異なるのは“重量”であって、質量は物体固有の普遍値であることを認識しておく必要があります。
重力補正が必要になるケースは、異なる2か所で重量を測った場合です。 このような操作を実際に行っている例としては人工衛星などがあります。 重力補正を行う場合は、
  1. 測定箇所それぞれの重力加速度を知ること
  2. “重量=質量×重力加速度”の関係式からそれぞれの場所での質量を求め、等しいことを確認すること

が求められます。

      

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参考文献

重力補正を必要とする製品はそれほど多くはありません。 人工衛星の開発では、この重力補正が必要となった数少ない事例の一つといえると思います。 宇宙で必要なのは“質量”であって、人工衛星の姿勢制御等にはこの重力補正による影響は無視できません。

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