2.2.等価摩擦径の導出方法
等価摩擦径導出にあたり、まずは下図2-1のような平面上の円環接触の場合を考えます(例えば、ねじ座面等が相当します)。
図2-1 接触部条件
計算の前提条件として、接触面に働く垂直荷重と摩擦係数がその全域で均一と仮定します。
そこで、接触面に働く単位面積あたりの垂直荷重(つまり面圧)をPとします。
このとき、上図の半径rの位置にある面積素片(上図点部)に着目します。
この面積素片に働くトルクは次のようになります。
面積素片の面積 |
\( dS = r d\theta \cdot dr \) |
面積素片に働く摩擦力 |
\( df = \mu P \cdot dS \) |
\[
\begin{eqnarray}
dT
& = &
rdf
\\
& = &
\mu \cdot P \cdot r^2 d\theta dr
\tag{2-1}
\end{eqnarray}
\]
(2-1)式はモーメント長、つまり半径rの重み付けが考慮されており、半径rが変化すれば面積素片のトルクも変化します。
この面積素片のトルクdTを内外径に囲まれた範囲(r
i ~r
o )で積分すれば、接触面全域に発生するトルクが計算できます。
\[
\begin{eqnarray}
T
& = &
\int_{r_{i}}^{r_{o}} \int_{0}^{2\pi} \mu \cdot P \cdot r^2 d\theta dr
\\
& = &
\mu \cdot P \int_{r_{i}}^{r_{o}} \int_{0}^{2\pi} r^2 d\theta dr
\\
& = &
\frac{2}{3}\pi (r_{o}^3 - r_{i}^3) \mu \cdot P
\end{eqnarray}
\tag{2-2}
\]
ここで次のように考えることで、等価摩擦直径を定義出来ます。
(2-2)式によって求めた接触部のトルクTを接触部面積\( S=\pi(r_{o}^2 - r_{i}^2) \)で割り、単位面積あたりのトルクとして計算します。
\[
\frac{T}{S}
=
\frac{2(r_{o}^3-r_{i}^3)}{3(r_{o}^2-r_{i}^2)} \ \mu P
\tag{2-3}
\]
接触部に働く垂直荷重はF =PSゆえ、上式(2-3)は次のように書き換えられます。
\[
T
=
\frac{2(r_{o}^3-r_{i}^3)}{3(r_{o}^2-r_{i}^2)} \ \mu F
\tag{2-4}
\]
この(2-4)式は、“トルク=モーメント長×力”という一般式の形になっていることがわかります。
そこで、モーメント長に相当する項を次のパラメータで置き換えれば、
\[
r_w
=
\frac{2(r_{o}^3-r_{i}^3)}{3(r_{o}^2-r_{i}^2)}
\tag{2-5}
\]
(2-4)式は次のように書き換えることができます。
\[
T
=
r_w \mu F
\tag{2-6}
\]
(2-6)式は、「接触面に働く摩擦力μFが、見かけの半径r
wの円周上に作用してトルクを発生させている」と考えることができます。
この半径r
wを等価摩擦半径と言います。
ここまでは、2次元平面上の円環接触に対する等価摩擦径を導出しました。
同様にして、円錐台面での等価摩擦径も導出できますので、簡単にさわりだけ説明しておきます。
円錐の半頂角をαとします。
円錐台面上に面積素片とると、その面積素片に働くトルクは次のようになります。
図2-2 円錐面での等価摩擦径
これを範囲(r
i~r
o)で積分すれば、接触面全域に発生するトルクが計算できます。
\[
T
=
\frac{2}{3}\pi(r_o^3-r_i^3)\frac{\mu P}{\sin \alpha}
\]
また、円錐台の側面積は次のようになります。
\[
S
=
\frac{\pi(r_o^2-r_i^2)}{\sin \alpha}
\]
以上から等価摩擦半径を求めると、結局平面のときと同じ(2-5)式になります。
\[
r_w
=
\frac{2(r_{o}^3-r_{i}^3)}{3(r_{o}^2-r_{i}^2)}
\tag{2-5}
\]