コラム

NASA多項式プログラムとJANAF表の関係

作成日:20200227  テーマ1:科学  テーマ2:化学  テーマ3:

NASA多項式プログラムとは、NASAが公開している様々な化学種の定圧比熱Cp°、(生成)エンタルピーH°、(生成)エントロピーS°を近似的に算出できる温度Tの多項式関数のことです。この多項式近似は最小二乗法によるものです。

\[ \begin{eqnarray} & & \frac{C_p^{\circ}}{R} = a_1 T^{-2} + a_2 T^{-1} + a_3 + a_4 T + a_5 T^2 + a_6 T^3 + a_7 T^4 \\ \\ & & \frac{H^{\circ}}{RT} = -a_1 T^{-2} + a_2 T^{-1} \ln T + a_3 + \frac{a_4}{2} T + \frac{a_5}{3} T^2 + \frac{a_6}{4} T^3 + \frac{a_7}{5} T^4 + \frac{a_8}{T} \\ \\ & & \frac{S^{\circ}}{T} = -\frac{a_1}{2} T^{-2} - a_2 T^{-1} + a_3 \ln T + a_4 T + \frac{a_5}{2} T^2 + \frac{a_6}{3} T^3 + \frac{a_7}{4} T^4 + a_9 \end{eqnarray} \]
なお各パラメータの単位は、H°= [kJ/mol]、CpとS°=[J/mol・K]になります。
ところで、各パラメータに“°”がついているのは、圧力1[bar](105[Pa])時の値であることを明示するものです。

これらを元にすれば、JANAFの表の値を近似的に再現できます。
具体例として、温度600[K]でのNH3についていろいろ計算してみます。

まず、多項式プログラムの係数を設定します。これはネットで検索を掛ければ出てきます。
NH3、N2、H2のそれぞれの係数は次の通りです。

\[ NH3: \begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \\ a_3 \\ a_4 \\ a_5 \\ a_6 \\ a_7 \\ a_8 \\ a_9 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -76812.2615 & \\ 1270.951578 & \\ -3.89322913 & \\ 0.02145988418 & \\ -0.00002183766703 & \\ 1.317385706E-08 & \\ -3.33232206E-12 & \\ -12648.86413 & \\ 43.66014588 & \end{pmatrix} \] \[ N2: \begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \\ a_3 \\ a_4 \\ a_5 \\ a_6 \\ a_7 \\ a_8 \\ a_9 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 22103.71497 & \\ -381.846182 & \\ 6.08273836 & \\ -0.00853091441 & \\ 0.00001384646189 & \\ -9.62579362E-09 & \\ 2.519705809E-12 & \\ 710.846086 & \\ -10.76003744 & \end{pmatrix} \] \[ H2: \begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \\ a_3 \\ a_4 \\ a_5 \\ a_6 \\ a_7 \\ a_8 \\ a_9 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 40783.2321 & \\ -800.918604 & \\ 8.21470201 & \\ -0.01269714457 & \\ 0.00001753605076 & \\ -1.20286027E-08 & \\ 3.36809349E-12 & \\ 2682.484665 & \\ -30.43788844 & \end{pmatrix} \]
多項式から、600[K]でのNH3、N2、H2の定圧比熱Cp°、(生成)エンタルピーH°(⊿fH°)、(生成)エントロピーS°(S°f)が求まります。
\[ \begin{eqnarray} & \Delta_f H_{NH3}^{\circ} = -33.766 \quad & , & \Delta_f H_{N2}^{\circ} = 8.894 \quad & , & \Delta_f H_{H2}^{\circ} = 8.811 \quad & \\ \\ & S_{fNH3}^{\circ} = 220.580 \quad & , & S_{fN2}^{\circ} = 212.177 \quad & , & S_{fH2}^{\circ} = 151.079 \quad & \end{eqnarray} \] 上記S°はJANAFの表のS°(3列目)の値とほぼ一致します。
またこれらから、600[K]での反応エンタルピー⊿rH°と反応エントロピー⊿rS°が計算できます。
\[ \begin{eqnarray} & H_r^{\circ} = & \Delta_f H_{NH3}^{\circ} - \frac{1}{2} \times \Delta_f H_{N2}^{\circ} - \frac{3}{2} \times \Delta_f H_{H2}^{\circ} = -51.429 \\ \\ & S_r^{\circ} = & S_{fNH3}^{\circ} - \frac{1}{2} \times S_{fN2}^{\circ} - \frac{3}{2} \times S_{fH2}^{\circ} = -112.126 \end{eqnarray} \]
この結果から、600[K]での反応ギブスエネルギー⊿rG°が求まります。
\[ \Delta_r G^{\circ} = H_r^{\circ} - T S_r^{\circ} = 15.846 \] 以上の⊿rH°、⊿rG°はそれぞれ、JANAFの表の⊿rH°(6列目)、⊿rG°(7列目)とほぼ一致します。
最後に平衡定数(分圧[bar])を計算します。
\[ \ln K_p = \frac{ -G_r^{\circ} \times 10^3 }{ RT } \quad \Leftrightarrow \quad K_p = \exp { \frac{ -G_r^{\circ} \times 10^3 }{ RT } } = 4.173E-02 \]
このままの値ではJANAFの表のlog Kfとは一致しません。
一致させるには次の処理を行います。
\[ \log K_f = \log_{ \ 10}{K_p} = -1.380 \]

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