熱力学

1.熱力学とは?

1.1.熱力学の目的

熱力学は、 ある条件下で存在する物質の状態と、 その変化の方向性を明らかにすることを目的としています。


これについて、水を例に挙げて見てみます。


図1.1-1 水の状態変化
図1.1-1 水の状態変化

上図のように水(液体)を冷やすと氷(固体)になったり、 熱すると水蒸気(気体)になったりと、 その形態を変化させます(これを相変化と呼びます)。

このとき、水へ与えたり水から奪ったりするものが “エネルギー”です。 状態変化が生じるとき物質から何等かの形でエネルギーは移動します。

エネルギーとは、 物質が潜在的に所有する物質の外へ行う仕事の能力 のことをいいます。


さて、物質とエネルギーの関係を次のように考えるとイメージしやすいかもしれません。

物質は、原子や分子といった非常に小さな粒子で構成されています。

水蒸気が存在する領域は容易に変形することから、 その構成分子の運動は高活性=高エネルギー状態であることがうかがえます。

それに対し、氷は変形しにくく頑固です。 つまり、その構成分子は動きたがらず、不活性=低エネルギー状態であるといえるでしょう。


図1.1-2 物質を構成する分子の動き
図1.1-2 物質を構成する分子の動き

このように、物質の状態はエネルギーの大きさによって決まる、と考えて問題ないでしょう。 そこで、 エネルギーの大きさによって物質の状態を議論しよう 、というのが熱力学の1つの目的になります。 このとき、分子1つ1つのエネルギーを見るのではなく、 物質全体(バルク)としてのエネルギーを捉えることで物質の状態を探っていきます。 つまり、 マクロな視点に立つことが熱力学の肝 になります。


ただし、これまでの議論では 物質の状態が釣り合っているとき、つまり平衡状態に着目 しているため、状態変化に対しては何も語りません。

そこで次の概念に移ります。


お湯と氷水を準備します。お湯の入ったコップを氷水につけしばらく放置すると、 必ず氷は融け、お湯と氷水が同じ熱さに変わります。 その後そのまま放置してもそれ以上状態が変わることはありません。


図1.1-3 状態変化の進み方
図1.1-3 状態変化の進み方

これは、 物質の状態変化が時間の進展とともにある1方向に向かって エネルギー移動が行われた結果である、と考えることができます。 この状態変化はもとに戻すことは出来ません。このような変化を不可逆変化と言います (逆に元に元に戻せる変化を可逆変化と呼びます)。


さて、エネルギーはスカラーですから方向性といってもベクトルとして扱うことは出来ません。 そこでエネルギー移動の方向性を決定するために、エントロピーという概念を導入します。 エントロピーは 乱雑さ、無秩序さを表すパラメータ として認知されています。


実はここで、エネルギーの移動に対して分類を行わなければなりません。

エネルギーが物質から外へ移動するとき、物質は外に対して仕事を行います (自分の状態に変化を伴いながら...)。 つまり、仕事とはエネルギーそのものではなく、その移動形態を表すものです。

ところがその移動に際し、どうしても仕事として使えないエネルギーが存在します。 いわばエネルギーの通行税といったようなものです。 これが熱エネルギーです。熱も仕事同様エネルギーの移動形態を表すものです。 熱についての詳細はここでは割愛しますが、 仕事によるエネルギーの移動はある方向性を持ったエネルギーの取出しを意味し、 熱によるエネルギーの移動はバラバラな方向のエネルギーの取出しを意味します。

バラバラであることは打ち消し合いが生じることを意味し、 その打ち消し合いに相当するエネルギーが通行税として支払われる、 とイメージすればわかりやすいかもしれません。

このバラバラなエネルギーの移動という言葉から、熱とエントロピーはつながることになります。

このエントロピーによってエネルギーの流れの方向性を明らかにし、 物質の状態変化の方向を明らかにすることが、 熱力学の2つ目の目的になります。


このように、 熱力学ではエネルギーとエントロピーという2つの物理量を、 マクロな視点で捉えながら理論展開されていきます。 エネルギーやエントロピーは平衡状態の値であり、時間を陽に含みません。 そのため、時間の方向性はあっても時間の依存性はありません。


最後に、物理学全般において基本となる考え方に極値原理というものが存在します。

極値原理とは、 自発的に生じる現象は、 ある物理量を最小(極小)または最大(極大)になるよう時間発展する 、という考え方です。

この考え方によって光の屈折に関するフェルマーの定理や(解析)力学の最小作用の原理が生み出され、 それを元に理論構築され、その正しさが受け入れられています。


実は、エネルギー、エントロピー、極値原理といった考え方は、 人類のこれまでの経験と信念に基づいて公理化されたものです。 従って、熱力学を学ぶ上ではこの考え方に疑念を持たず(?)受け入れることが重要になります。

1.2.系と外界

ここでは、熱力学を学ぶ上で重要となる言葉の定義をしておきます。

“系”とは熱力学において対象となるもので、物質や物体等が相当します。

それに対し、系以外の部分を“外界”と呼びます。


図1.2-1 系と外界
図1.2-1 系と外界

熱力学において、系は次の3つに分類します。


  • (1)孤立系:系と外界との間にエネルギーや物質の交換はない。
  • (2)閉鎖系:系と外界との間にエネルギー交換はあるが、物質の交換はない。
  • (3)開放系:系と外界との間にエネルギーや物質の交換がある。

図1.2-2 系の種類
図1.2-2 系の種類

本サイトでは、初めに(1)孤立系と(2)閉鎖系の一様かつ等方な純物質(混ざりものなし) に対する理論展開を見ていきます。

その後、開放系で多成分の理論展開に移行していくことにします。

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