3.変形と力の関係

3.1.変形の熱力学

物体の変形とは、物体が状態変化したことに他なりません。 一般に物体の状態変化は熱力学によって表現されることから、本節では変形と熱力学との関係について見ることにします。

物体は変形すると内部応力が発生します。この内部応力によって行われる仕事は次のようにして決まります。
物体内に働く単位体積あたりの力\( \partial \sigma_{ij} / \partial x_j \) (詳細は連続体力学ページ3.3節参照)によって変位\( \delta u_i \)が生じるとき、体積素片に働く仕事\( \delta R \)は次のようになります。 \[ \delta R = \frac{\partial \sigma_{ij}}{\partial x_j} \delta u_i \] これを物体全域にわたって積分し、部分積分を施すと次式が得られます。 \[ \begin{align} \int \delta R dV &= \int \frac{\partial \sigma_{ij}}{\partial x_j} \delta u_i dV \\ &= \oint \sigma_{ij} \delta u_i dS_j - \int \sigma_{ij} \ \frac{\partial \delta u_i}{\partial x_j} dV \end{align} \tag{3.1-1} \] なお、\( dS_j \)は物体表面の面積素片ベクトルのj成分になります。

今、理想条件として無限遠方で変形をうけない有界でない物体を考えます (考察対象を表面から十分離れた内部に限る、という意味があります)。 このとき、表面で変形はないため(3.1-1)式右辺第一項の面積分は0であり、 \[ \begin{align} \int \delta R dV &= - \int \sigma_{ij} \frac{\partial \delta u_i}{\partial x_j} \delta u_i dV \\ &= - \frac{1}{2} \int \sigma_{ij} \ \delta \left( \frac{\partial \delta u_i}{\partial x_j} +\frac{\partial \delta u_j}{\partial x_i} \right) dV \\ &= - \int \sigma_{ij} \ \delta \epsilon_{ij} \ dV \end{align} \tag{3.1-1} \] となって、内部応力によって行われる仕事\( \delta u_i \)は、応力テンソル\( \sigma_{ij} \ \)とひずみテンソル変化\( \delta \epsilon_{ij} \ \)(δがついています)の積で決まります。 \[ \delta R = - \sigma_{ij} \ \ \delta \epsilon_{ij} \tag{3.1-2} \] ここで、変形に対して次の条件を与えます。
変形仮定はきわめてゆるやかに行われ、時々刻々と熱平衡状態をとるものとします。 つまり、この変形過程は可逆過程、ということになります。
物体の単位体積あたりの内部エネルギー変化量\( dU \)は、熱力学第一法則により単位体積に与えられる熱量\( Q \)と内部応力によって行われる仕事\( \delta R \)で表せます。 \[ dU = Q - \delta R \tag{3.1-3} \] 今変形は可逆過程なので熱量\( Q = T dS \)(温度\( T \)、エントロピー\( S \))であり、(3.1-2)式とあわせて次のように書き換えられます。 \[ dU = TdS + \sigma_{ij} \ \delta \epsilon_{ij} \tag{3.1-4} \] ここで(ヘルムホルツの)自由エネルギー\( F = U - TS \)を導入します。 \( F \)の完全微分系、つまり自由エネルギーの変化量\( dF \)は次式になります。 \[ dF = dU -TdS - SdT = -SdT + \sigma_{ij} \ \delta \epsilon_{ij} \tag{3.1-5} \] また、ギブス(の自由)エネルギー\( G = F + PV \)を導入します。 \( G \)の完全微分系、つまりギブスエネルギーの変化量\( dG \)は次式になります。 \[ dG = dF + PdV + VdP = -SdT + \epsilon_{ij} \ \delta \sigma_{ij} \tag{3.1-6} \]
以上の結果をもとに、変形過程に条件を加えることで、熱力学関数とひずみテンソル\( \epsilon_{ij} \ \)、応力テンソル\( \sigma_{ij} \ \)の関係式が得られます。

(1)等エントロピー過程: \( \displaystyle \sigma_{ij} = \left( \frac{\partial U}{\partial \epsilon_{ij}} \right)_S \tag{3.1-7} \) (2)等温過程: \( \displaystyle \sigma_{ij} = \left( \frac{\partial F}{\partial \epsilon_{ij}} \right)_T \tag{3.1-8} \) (3)等温過程: \( \displaystyle \epsilon_{ij} = \left( \frac{\partial G}{\partial \sigma_{ij}} \right)_T \tag{3.1-9} \)

参考文献

連続体力学のうち、弾性範囲内の固体の変形を扱ったものです。 材料力学という形で実用上用いられています。