2.連続体の変形

2.1.変位ベクトル

物体内の任意の点Pの移動に着目します。ただし、Pは拘束点ではないものとします。
点Pの位置ベクトルを\( \boldsymbol{r} \)、移動後の点P'の位置ベクトルを\( \boldsymbol{r'} \)とするとき、Pを始点、P'を終点とするベクトル\( \boldsymbol{u} \)を変位ベクトルと呼びます。
\[ \boldsymbol{u}=\boldsymbol{r'} - \boldsymbol{r} \tag{2.1-1} \]
図2.1-1 変位ベクトル
図2.1-1 変位ベクトル

ベクトル\( \boldsymbol{u} \)は点PからP'への移動を表していますので、置がわる=変位を意味することは明らかです。 また、変位ベクトル\( \boldsymbol{u} \)は元の位置ベクトル\( \boldsymbol{r} \)によって定まるため、\( \boldsymbol{r} \)の関数\( \boldsymbol{u} = \boldsymbol{u} (\boldsymbol{r}) \)になります (以降の話はこれを前提にしていますので重要です)。

2.2.変形

2.2.1.変形の定義

物体の形や容積が変わることを変形といいます。 このとき物体内の各点は、変位に伴ってその点間距離も変化します。 物体内の各点が変位しているにもかかわらず、その点間距離が変化しない場合は、剛体が並進や回転運動をしているものと考えられます (図右側)。

図2.2.1-1 物体の変形
図2.2.1-1 物体の変形

2.2.2.変形テンソル

物体内の近接する任意の二点P、Qに着目します。 それぞれの位置ベクトルを\( \boldsymbol{r} \)、\( \boldsymbol{r} \)+d\( \boldsymbol{r} \)とします (近接点なのでd\( \boldsymbol{r} \)は微小ベクトル)。
物体が変形して点PはP'に、点QはQ'に変位変位したとき、それぞれの変位ベクトルは\( \boldsymbol{u}( \boldsymbol{r} )、\boldsymbol{u}( \boldsymbol{r} + d \boldsymbol{r} ) \)で表せます。

図2.2.2-1 物体の変形に伴う変位
図2.2.2-1 物体の変形に伴う変位

このとき、次の関係式が成り立ちます。
\[ d \boldsymbol{r'} - d \boldsymbol{r} = \boldsymbol{u} ( \boldsymbol{r} + d \boldsymbol{r} ) - \boldsymbol{u} ( \boldsymbol{r} ) \tag{2.2.2-1} \] \( d \boldsymbol{r} \)は微小ゆえテイラー展開して二次以上の微小項を無視し、次のように近似します。
\[ d \boldsymbol{r'} = d \boldsymbol{r} + \frac {\partial \boldsymbol{u} ( \boldsymbol{r} )}{\partial \boldsymbol{r}} d \boldsymbol{r} \tag{2.2.2-2} \] これは、変形によって生じる近傍点の変位差を表します。 特に右辺第二項を成分表示すると次のようになります。
\[ \begin{eqnarray} \frac {\partial \boldsymbol{u} ( \boldsymbol{r} )}{\partial \boldsymbol{r}} d \boldsymbol{r} &=& \left( \begin{array}{c} \displaystyle \frac {\partial u_x}{\partial x} dx + \frac {\partial u_x}{\partial y} dy + \frac {\partial u_x}{\partial z} dz \hspace{10px} \\ \displaystyle \frac {\partial u_x}{\partial x} dx + \frac {\partial u_x}{\partial y} dy + \frac {\partial u_x}{\partial z} dz \hspace{10px} \\ \displaystyle \frac {\partial u_x}{\partial x} dx + \frac {\partial u_x}{\partial y} dy + \frac {\partial u_x}{\partial z} dz \hspace{10px} \end{array} \right) \\ &=& \left( \begin{array}{ccc} \displaystyle \frac {\partial u_x}{\partial x} & \displaystyle \frac {\partial u_x}{\partial y} & \displaystyle \frac {\partial u_x}{\partial z} \\ \displaystyle \frac {\partial u_y}{\partial x} & \displaystyle \frac {\partial u_y}{\partial y} & \displaystyle \frac {\partial u_y}{\partial z} \\ \displaystyle \frac {\partial u_z}{\partial x} & \displaystyle \frac {\partial u_z}{\partial y} & \displaystyle \frac {\partial u_z}{\partial z} \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} dx \\ dy \\ dz \end{array} \right) \\ \end{eqnarray} \tag{2.2.2-4} \] d\( \boldsymbol{r} \)の係数行列の各成分は、変位ベクトル成分の各軸方向の変化量を示しています。 また、この係数行列はベクトル解析で知られているとおり、ベクトル\( \boldsymbol{u} (\boldsymbol{r}) \)の勾配\( \nabla \boldsymbol{u} \)で表せます。 テンソルの定理により、ベクトルの勾配は二階のテンソルであることから、係数行列\( ( \partial u_i/\partial x_j ) \)を変形テンソルと呼びます。

参考文献

流体力学や弾性理論(固体の変形)は連続体力学に含まれます。 連続体力学は、分子の運動は気にせず物体を連続体として扱うことで、物質のマクロな挙動(流れ、変形)を扱うものです。