フーリエ級数とは、任意の関数を三角関数の和で表したものです(三角級数)。 フーリエ級数にとって重要なことは
  1. フーリエ級数がつくれるための条件
  2. フーリエ級数がもとの関数に収束するための条件
の二つです。
(1)は、フーリエ級数の各係数(フーリエ係数)が算出でき、関数が三角級数化できるための条件です。 この条件はとにかく三角級数を作ることに焦点をあてたもので、フーリエ級数がもとの関数と似ようが似まいが関係ありません
そこで(2)の条件が必要になります。 \(f(x)\)がフーリエ級数で表せれば、\(f(x)\)の表現は少なくとも二つ存在することになります。 つまり同じ関数の表現方法が二通り(以上)あって、\(f(x)\)とフーリエ級数は重なり合わなければなりません (リンゴとappleが全く同じものを表すのと同じようなものです)。 このとき、フーリエ級数は\(f(x)\)に収束する必要があります。 収束しなければ、互いの関数の性質に異なる部分が生じ、もはや同一関数を表すとは言えなくなります。 従って、上記(2)の条件については以下の点に着目することになります。
  • フーリエ級数がもとの関数\(f(x)\)を完全に再現するための条件
  • 完全には無理だが特殊な点(不連続点)を除けば再現できるような条件

本サイトでは上述の内容に関して、次の手順に沿って話を進めます。

Step1: 関数\(\small f(x)\)からフーリエ係数を作る 1章
Step2: フーリエ係数を係数とした三角級数=フーリエ級数を作る
Step3: 直交関数系を導入し、フーリエ級数を一般化した上で\(\small f(x)\)とフーリエ級数の誤差を最小にする条件 (ベッセルの不等式、パーセバルの等式)を導き出す 2章
Step4: フーリエ級数が収束するための条件とその証明方法について見ていく 3章

さて、フーリエ級数の性質は数学だけでなく理工学全般において重要な役割を担っており、例えば電気信号、振動、音、光の解析、画像処理、医療、経済など、私たちの身近なところで活用されています。 実用的な内容、フーリエ級数を使ったアプリ等については本サイト内の別ページを用意していますので、そちらをご参照ください。

<フーリエ級数の実用ページ>


1.フーリエ級数

1.1.フーリエ級数とは

区間\([-\pi, \pi]\)で積分可能な周期\(2\pi\)の関数\(f(x)\)が与えられたとき、次式で定まる\(a_n,b_n\)をフーリエ係数と呼びます。
\[ \begin{align} & a_n = \displaystyle \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos \left( nx \right) dx \\ & b_n =\displaystyle \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \sin \left( nx \right) dx \end{align} \tag{1.1-1} \]
このフーリエ係数\(a_n,b_n\)を係数とする三角級数をフーリエ級数と呼びます。
\[ f(x) = \displaystyle \frac{a_o}{2} + \sum_{ n = 1 }^{ \infty } \left\{ a_n \cos \left( nx \right) + b_n \sin \left( nx \right) \right\} \tag{1.1-2} \]
フーリエ係数について、(1.1-2)式のフーリエ級数に\( \cos mx \)を掛け\([ -\pi,\pi]\)で積分すると\(a_n\)が、\( \sin mx \)を掛け\([ -\pi,\pi]\)で積分すると\(b_n\)が求まります。 ここでは\(a_n\)の算出を行います(\(b_n\)も同様に行えます)。
\[ \begin{align} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos (mx) dx & = \int_{-\pi}^{\pi} \frac{a_o}{2} \cos (mx) dx + \int_{-\pi}^{\pi} \sum_{n=1}^{\infty} a_n \cos (nx) \cos (mx) dx \\ & \qquad + \int_{-\pi}^{\pi} \sum_{n=1}^{\infty} b_n \sin (nx) \cos (mx) dx \\ & = \int_{-\pi}^{\pi} \frac{a_o}{2} \cos (mx) dx + \sum_{n=1}^{\infty} a_n \int_{-\pi}^{\pi} \cos (nx) \cos (mx) dx \\ & \qquad + \sum_{n=1}^{\infty} b_n \int_{-\pi}^{\pi} \sin (nx) \cos (mx) dx \end{align} \]
ここで三角関数の直交性の特徴
\[ \begin{align} & \displaystyle \int_{-\pi}^{\pi} \cos (nx) \cos (mx) dx = \begin{cases} 0 \ ( m\neq n ) \\ \pi \ ( m = n ) \end{cases} \\ & \int_{-\pi}^{\pi} \sin (nx) \cos (mx) dx = 0 \end{align} \]
を活かして、右辺の各項を個別に計算し、
\[ \begin{align} & \int_{-\pi}^{\pi} \frac{a_o}{2} \cos (mx) dx = \frac{a_o}{2} \left[ \frac{\sin (mx)}{m} \ \right]_{-\pi}^{\pi} = 0 \\ & \sum_{n=1}^{\infty} a_n \int_{-\pi}^{\pi} \cos (nx) \cos (mx) dx = \pi a_n \\ & \sum_{n=1}^{\infty} b_n \int_{-\pi}^{\pi} \sin (nx) \cos (mx) dx = 0 \end{align} \]
(1.1-1)\( a_n \)式が導き出されます。
\[ \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos (nx) dx = \pi a_n \]

さて、周期\(2\pi\)で定義したフーリエ級数に対して、区間を\([-\pi,\pi]\)から\([a,b]\)、周期を\(2\pi\)から\(2L=b-a\)に置き換え、次の変数変換を行うことで区間、周期を一般化できます。
\[ X : x = 2 \pi : 2L \ \leftrightarrow \ X = \frac{L}{\pi} x \tag{1.1-3} \]
区間、周期を一般化したフーリエ級数とフーリエ係数は次のとおりです。
\[ \begin{align} & f(x) = \displaystyle \frac{a_o}{2} + \sum_{ N = 1 }^{ \infty } \left( a_n \cos \left( \frac{n \pi x \ }{L} \right) + b_n \sin \left( \frac{n \pi x \ }{L} \right) \right) \\ & a_n = \displaystyle \frac{1}{L} \int_{-L}^{L} f(x) \cos \left( \frac{n \pi x \ }{L} \right) dx \\ & b_n =\displaystyle \frac{1}{L} \int_{-L}^{L} f(x) \sin \left( \frac{n \pi x \ }{L} \right) dx \end{align} \tag{1.1-4} \]

1.2.複素フーリエ級数

フーリエ級数を複素形式で表現することで計算や表記を簡略化できます。
オイラーの公式
\[ \begin{align} & e^{inx} = \cos (nx) + i \sin (nx) \\ & e^{-inx} = \cos (nx) - i \sin (nx) \end{align} \tag{1.2-1} \]
から余弦成分(\(\cos\))と正弦成分(\(\sin\))は次のように表せます。
\[ \begin{align} \cos (nx) = \frac{ e^{inx} + e^{-inx}}{2} \\ \sin (nx) = \frac{ e^{inx} - e^{-inx}}{2} \end{align} \]
これを(1.1-1)の\( f(x) \)式に代入すると、
\[ f(x) = \frac{a_o}{2} + \sum_{n=1}^{\infty} \left( \frac{a_n - i b_n}{2} e^{inx} + \frac{a_n + i b_n}{2} e^{-inx} \ \right) \tag{1.2-2} \]
が得られます。ここで、右辺の各係数を次のように設定します。
\[ c_n = \frac{a_n - i b_n}{2} , \ c_{-n} = \frac{a_n + i b_n}{2} , \ c_o = \frac{a_o}{2} \tag{1.2-3} \]
すると、(1.2-2)式は次の簡単な式になります。
\[ \begin{align} f(x) & = c_o + \sum_{n=1}^{\infty} c_n e^{inx} + \sum_{n=-1}^{-\infty} c_{-n} \ e^{-inx} \\ & = \sum_{n=-\infty}^{\infty} c_n e^{inx} \end{align} \]
また、\( c_n \)は1.1節のフーリエ係数の結果から、次のように表せます。
\[ \begin{align} c_n & = \frac{a_n - i b_n}{2} \\ & = \frac{1}{2 \pi} \left\{ \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos(nx) dx - i \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \sin(nx) dx \right\} \\ & = \frac{1}{2 \pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \left\{ \cos(nx) - i \sin(nx) \right\} dx \\ & = \frac{1}{2 \pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) e^{-inx} \ dx \ (\because (1.2-1) ) \end{align} \]
以上をまとめて、下式\( f(x) \)式を複素フーリエ級数、\( c_n \)式を複素フーリエ係数と言います。
\[ \begin{align} & f(x) = \displaystyle \sum_{-\infty}^{\infty} c_n e^{inx} \\ & c_n = \displaystyle \frac{1}{2 \pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) e^{-inx} dx \end{align} \tag{1.2-4} \]
さらに(1.1-3)式の変数変換することで、任意の周期関数に対する\( f(x) \)、\( c_n \)が求まります。
\[ \begin{align} & f(x) = \displaystyle \sum_{-\infty}^{\infty} c_n e^{\frac{in \pi x}{L}} \\ & c_n = \displaystyle \frac{1}{2L} \int_{-L}^{L} f(x) e^{-\frac{in \pi x}{L}} dx \end{align} \tag{1.2-5} \]
となります。

1.3.実関数のフーリエ級数

ここで、\( f(x) \)が実関数の場合を考えてみます(実用上はこのケースがほとんどなためです)。
(1.2-4)式にオイラーの式を代入して書くと実部と虚部をはっきり表現できます。
\[ \begin{align} f(x) & = \displaystyle \sum_{-\infty}^{\infty} \frac{a_n - i b_n}{2} \ \left\{ \cos (nx) + i \sin (nx) \right\} \\ & = \displaystyle \frac{1}{2} \bigl\{ a_n \cos (nx) + b_n \sin (nx) \\ & \qquad - i ( b_n \cos (nx) - a_n \sin (nx) ) \bigl\} \end{align} \]
\( f(x) \)は実関数なので、実部の余弦成分(\(\cos \))の係数は\(a_n\)、正弦成分(\(\sin \))の係数は\(b_n\)になります。 ここで\( n \lt 0 \)の場合を計算すると、
\[ \begin{align} a_{-n} & = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos (-nx) dx \\ & = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos (nx) dx \\ & = a_n \\ \\ b_{-n} & = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \sin (-nx) dx \\ & = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \sin (nx) dx \\ & = b_n \end{align} \]
が得られ、この結果から\( a_n \)は偶関数、\( b_n \)は奇関数であることがわかります。 また、\( c_{-n} \)は\( c_n \)の複素共役になります。
\[ c_{-n} = \frac{a_{-n} - i b_{-n}}{2} = \frac{a_n + i b_n}{2} = c_n^* \]
また\( n=0 \)のとき、\( a_o,b_o \)は
\[ \begin{align} & a_o = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos (0) dx = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) dx \\ & b_o = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \sin (0) dx = 0 \end{align} \]
となることから、実関数の複素フーリエ係数は\( n≧0 \)のみを計算すればよいことがわかります。

参考文献

実用の範囲では、フーリエ級数展開の収束性について知っていれば事足りていて、その証明までは不要かもしれません。