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本ページでは締結用ねじのうち、特に三角ねじ(メートル並目/細目、ユニファイ等)に関する設計の要点を紹介します。

1.ねじ設計の考え方

1.1.締結ねじの目的

締結ねじの主な目的は次のとおりです。
部品同士を結合したり分解すること
結合だけを考えれば接着や溶接、リベット止めなどの別の方法も考えられますが、分解を考慮した場合は締結ねじを用いるのが一般的です。
ねじが締結を実現するためには次の条件が必要になります。
ねじは円筒面に斜面を巻き付けた構造となっています。 この斜面の傾きをリード角と呼び、一般に記号\( \beta \)で表します。
図1.1-1 リード角
図1.1-1 リード角
このリードによって、ねじを回転させるとねじ面を滑りながら軸方向に進み、やがて座面は被締結体に接触します。
さらに締め続けると、座面はそれ以上進めませんが、ねじ面はリードによって軸部にねじれと伸びを伴いながら進んでいき、同時に被締結体は圧縮されます。
図1.1-2 締結の過程
図1.1-2 締結の過程
このとき発生するボルトの伸びは引張りばね、被締結体の圧縮は圧縮ばねとみることができ、これらの変形はフックの法則に基づくばね力と原理的に同じです。 この軸部の伸びと被締結体の圧縮によって生じる力のつり合いが、ねじに締結の機能を与えます。 このときねじ軸方向に発生する力を軸力と呼びます。
図1.1-3 軸力の発生
図1.1-3 軸力の発生
また、締結機能は軸方向だけでなく、軸回りの回転についてもつり合いも必要です。 これは主に座面とねじ面の摩擦力によるトルクのつり合いです。 この回転つり合い状態と軸力を得るために必要なのがねじの締付トルクになります。

軸力の発生している状態とは、予張力(プリロード)がかかっている状態です。 もしボルトや被締結体が剛体なら、座面やねじ面は接触するだけで、ボルトや被締結体に変形に伴う力(垂直抗力)は発生しませんので、摩擦力も発生しません。 従って、軸力も発生しないため、締結状態を保つことはできません。
ねじ面の力学的作用については、 3章でその詳細を見ることにします。

1.2.締結ねじの不具合事象

通常、機械製品は部品同士を結合した状態で使用するので、締結ねじの設計では、次の事象が発生しないよう考慮しなければなりません。
  1. ねじに有害な緩みが発生しないこと
  2. ねじまたは被締結体が壊れないこと

*:緩み=締め付け時の軸力から低下すること

これらを守らなければ、次に挙げるような不具合を誘発することになります。 図1.2-1 締結ねじに発生する不具合
図1.2-1 締結ねじに発生する不具合
締結ねじに発生する不具合は多岐にわたり、また相互に絡み合っています。 ただ最終的には、ねじの緩み→軸力不足による機能不全と破損につながっています。 このような不具合を発生させないために、設計段階で次のことを行う必要があります。

※:軸力については次節で説明します。

  1. 使用環境におけるさまざまな条件を洗い出す
  2. 洗い出したすべての項目に対して十分な耐性が得られることを確認する
最終的には上記を満足した上で、製造、コスト、流通性、美観等を考慮に入れながら設計することになります。
さて、本ページ冒頭でも触れましたが、本サイトではねじ設計に関する計算アプリを公開していますので、ご活用ください。

参考文献