1.シール全般

シールとは、密封流体を逃げないように閉じ込めるための部品です。

シールは多様な条件で使用されており、そのため様々なタイプのものが存在します。

シールの大まかな分類を、図1-1に示します。


シール分類
図1-1 シール分類

特に運動用シールは、摺動性と気密性の両方を満足する必要があり、 その設計、選定は難しいものになります。 使用条件を明確にし、シールが持つ摺動性と気密性の折り合いを上手にとることが 設計に求められます。


なお本サイトでは、シール材の中でも特によく用いられる次の2部品


  • Oリング(2章
  • オイルシール(3章

の選定方法と使用箇所の設計方法について見ていくことにします。


2.Oリング

Oリングは、JIS B 2401「Oリング」で規格化されています。 特別な事情がない限り、Oリングを規格品から選定することで、 無用なコストアップの抑制、Oリング溝などの設計の簡素化、 信頼性の確保等が可能になります。


Oリング寸法
図2-1 Oリング寸法

2.1.Oリングの使用方法

Oリングは、下図のような円筒面に使用する場合と、平面に使用する場合が一般的です。


円筒面の使用例
図2.1-1 円筒面の使用例

平面に使用する場合は、内圧がかかる場合と、外圧がかかる場合の2通りがあります。


平面の使用例
図2.1-2 平面の使用例

2.2.Oリング太さの設定

Oリングは、押しつぶして相手物と密着させることによりシール機能を得ます。 つまり、Oリングのつぶれ具合(つぶし率)を適切に設定することが、 気密性や信頼性の観点から重要になります。

そこでOリングのつぶし率を計算し、以下に示す範囲に収まるような太さ(線径)dに設定します。


つぶし率
図2.2.1-1 つぶし率の適正範囲

Oリングが太ければ密着面積は増え、Oリングのヘタリも少なくなります。 よって、シール効果を長期間安定して保持させたい場合は、 太いものを選択することが望ましいと言えます。 また、太い分剛性も上がりますので、ねじれを予防することにもつながります。 ただし、太くなるほど一高価になるのが一般的であり、経済性を考慮し、 ちょうど良い塩梅の太さのものを選択、あるいは設計することが必要になります。


2.3.Oリング内径の設定

2.3.1.円筒面固定の場合

(1)軸側(ピストン側)装着時の内径設定

図2.3.1-1 軸側装着時
図2.3.1-1 軸側装着時

軸にOリングをはめ込む場合、Oリング内径diが溝底径Dsよりも大きいと、 Oリングは自由に動くため、Oリングを損傷させる危険性があります。 そのため、Oリング内径は溝底径よりも5%程度小さく設定します。 ただし、あまり小さくしすぎると線径が細り、 シール性の低下やヘタリなどによる劣化を早めるおそれがあります。


(2)穴側(シリンダ側)装着時の外径設定

図2.3.1-2 穴側装着時
図2.3.1-2 穴側装着時

Oリングを穴にはめ込む場合は、Oリング内径が軸径よりも小さいと 軸挿入時にOリングを損傷させる恐れがあります。 また、Oリングを溝外壁に押し付けて気密性を保つことから、 軸と同じ径、あるいはそれよりも若干大きめにするのが良いと考えられます。


2.3.2.平面固定の場合

(1)内圧作用時の内径設定

図2.3.2-1 内圧作用時
図2.3.2-1 内圧作用時

内側から圧力がかかると、Oリングは外側に押し付けられます。 そのため、事前に外側に押し付けた状態にしておけば、Oリングの動きを抑えられ、 ヘタリや摩耗などのトラブルを減らすことができます。 よって、Oリング外径と溝外径を同等に設定します。


(2)外圧作用時の内径設定

図2.3.2-2 外圧作用時
図2.3.2-2 外圧作用時

外側から圧力がかかると、Oリングは内側に押し付けられます。 この場合、Oリング内径と溝内径を同等に設定することで、 (1)での懸案事項を避けることが可能となります。


2.4.Oリング溝の設定

2.4.1.溝の寸法設定

2.2節 で見たOリングのつぶし率に合わせて溝深さhを設定します (計算式は図2.4.1-1を参照ください)。

  • 円筒面に使用する場合:ε=0.15~0.25
  • 平面に使用する場合:ε=0.15~0.3

Oリングは使用中、温度上昇により膨張したり、 オイルなどにより膨潤することがあります。 そのため、溝の断面積に対するOリングの断面積 (これを“充填率”といいます)が目安で80%程度となるように設定します。


図2.4.1-1 溝の寸法設定
図2.4.1-1 溝の寸法設定

2.4.2.溝/相手物の表面粗さ

Oリング接触面の表面が粗いと、シール性能の低下、Oリングの損傷などのトラブルを招きます。 よって、接触部の表面粗さには十分注意を払う必要があります。

参考までに、圧力変動が大きい場合はRz3.2程度を、 圧力変動が小さい場合はRz6.3~12.5程度を目安に仕上げるのが良いと考えられています。


2.4.3.円筒面使用時の軸/穴隙間

軸/穴クリアランスの大きさ、Oリングの硬さ(材質)、 使用時圧力によってはバックアップリングを必要とする場合があります。

これについては、JIS B 2406「油空圧用Oリング-Oリング溝の設計基準-基本計算」 に詳細が規定されていますので、そちらを参照してください。


2.4.4.その他注意事項

Oリングを装着した状態で組み立てる際に通過する箇所にエッジがあると、 Oリングがかじったり損傷するおそれがあります。 よって、当該部には面取りを付ける必要があります。 面取り角度は浅い方が望ましいですが、15°~45°程度で、 レイアウト上問題ない大きさのものを設定します。


図2.4.4-1 面取り
図2.4.4-1 面取り

2.5.材質の選定

材質の選定は、使用温度や使用雰囲気などの環境条件が支配的で、 さらに使用条件に合わせてゴムの硬度を考慮します。主な材質としては以下のものがあります。


表2.5-1 Oリングに使用する主な材質
材質 略称 性質
ニトリルゴム NBR 最も一般的に使用されている。耐油性、耐磨耗性、耐老化性が良い
水素化ニトリルゴム HNBR ニトリルゴムに対し、耐熱性、耐候性向上
フッ素ゴム FKM 高耐熱性、高耐薬品性
シリコーンゴム VMQ 使用温度範囲が広く、耐熱性、耐寒性に優れる
エチレンプロピレンゴム EPDM 耐老化性、耐オゾン性、耐候性、耐薬品性、耐磨耗性が良い
アクリルゴム ACM ニトリルゴムよりも耐熱性が良く、すぐれた耐油性を持つ
クロロプレンゴム CR 耐候性、耐オゾン性、耐熱性、耐薬品性など平均した性質を持つ
ブチルゴム IIR 耐候性、耐オゾン性、対ガス透過性がよく、極性溶剤に耐える

材質の特性については、上記表を参考に、メーカカタログ推奨値、 JIS B 2401「Oリング」またはJIS B 2410「Oリング-ゴム材料の選定指針」を参照してください。


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3.オイルシール

3.1.オイルシールの構造

オイルシールは、軸に回転接触しながら密封する接触式シールです。 接触式のため、摺動抵抗はありますが、 非接触式シールに比べて気密性が高いのが特徴です。

オイルシールの構造は、一般に金属環に合成ゴムを一体成型したものになります。 オイルシールの各部名称を図3.1-1に示します。


図3.1-1 オイルシール名称
図3.1-1 オイルシール名称

シールリップ部は、振動や密封流体の圧力変動などの影響を緩和しながら、 軸との接触状態を確保することで、安定した気密性能を保ちます。

ばねは、シールリップ部に適度な軸締め付け力を付与することで、 軸との良好な接触状態を長期間保持します。

ダストリップ部は大気開放側に設置され、異物混入などを防ぐ働きをします。

はめ合い部は、オイルシールをハウジングに固定する役目と、 当該部の気密性保持の2つの役割を持ちます。 金属環は、オイルシールをハウジングに圧入する際の補強として必要です。


オイルシールには様々な形態のものがあります。どのタイプを選択するかは、 メーカカタログあるいはJIS B 2402「オイルシール」を参照ください。

3.2.オイルシールの選定

オイルシールを設定するに当たっては、次のような項目を考慮に入れる必要があります。


  • 軸/ハウジング(穴)サイズ
  • 軸/ハウジング回転数
  • スラスト(面外)方向ストローク特性
  • 密封流体の種類
  • 密封流体圧力および外気圧
  • 使用温度
  • 使用環境雰囲気(ダストや泥はねなど)

など


これらの条件を満たすようなオイルシールの形状および材質選定を行う必要があります。

材料の主な性質については、2.5節を参照ください。

数あるオイルシールの中から適切なものを選定するには、 メーカあるいは販売店カタログを参照するか、メーカと相談の上決めていくのが最も良い方法です。


3.3.オイルシール取付部寸法の設定

3.3.1.軸の設計

オイルシールのリップ部を接触させて気密性を保持するために、 オイルシールにダメージを与えないようにする必要があります。 そのためには軸の材質、硬さ、軸径寸法、表面粗さ(加工方法)を適切に指示する必要があります。


a)軸の材質、硬さ

軸は、一般的に構造用炭素鋼の調質材以上の熱処理を加えたものを使用します。 この材料であれば、特に問題は発生しません。

それに対し、鋳造材や柔らかい材料(軽金属や鋼でも生材など)は、オイルシールには適しません。 鋳造材には巣(ピンホール)が発生します。 これがオイルシール接触部表面に現れた場合、漏れの原因につながります。 また、柔らかい材料は加工し難く、表面粗さを適切に仕上げるのが難しくなります。

軸表面硬度は、ロックウェルCスケール(HRC)30以上が望ましいとされています。

これは、軸表面に打痕がつきにくいこと、適度な硬さにより加工表面を適切な粗さにしやすい、 などが挙げられます。


b)軸径寸法

軸径公差は、はめ合い公差のh9を指定します。


c)表面粗さ(加工方法)

オイルシールのリップ部に発生する潤滑は、表面粗さが小さすぎても大き過ぎても良くなく、 次のような面粗度が適切と考えられています。


中心線平均粗さ(Ra):0.2a~0.8a
最大高さ(Rz):0.8s~2.5s

面粗度が小さ過ぎると油だまりが形成されず、接触部の油が保持されにくくなり、 すべり摩擦が大きくなります。それにより摩耗が促進される懸念があります。 逆に、面粗度が大き過ぎると大きな突起が出現し、オイルシールへの攻撃性が生じ、 摩耗が促進されます。

また、上記面粗度の範囲にあっても、軸方向に加工目があると漏れの原因になりますので、 注意が必要です。加工目は極力軸に対して直角方向につくのが理想的です。


d)軸端部面取り

軸端部に面取りを施さない場合、リップ部に損傷を与えたり、リップのめくれ、 ばね外れなどの問題が生じることがあります。

面取りについては、JIS B 2402「オイルシール」に推奨値が示されていますので、 そちらを参照ください。



3.3.2.ハウジングの設計

a)ハウジングの材質

オイルシールには鉄製の金属環が埋め込まれていますので、ハウジングが鉄系材料であれば、 特に問題はありません。

ハウジングの材質に軽金属や樹脂などを使用すると、線膨張係数が大きいため、 温度上昇に従いはめ合い隙間が拡大し、そこからの漏れや、 オイルシールの脱落といった問題が生じてきますので注意が必要です。

ハウジングに使用する材料は、線膨張係数の小さい材料を選ぶことが重要です。



b)ハウジング穴寸法

穴の寸法公差は、はめ合い公差のH8を指定します。



c)表面粗さ

オイルシールのはめ合い部でも、流体の漏れを抑えていますので、 当該部の面粗度も重要になります。

推奨面粗度は以下の通りです。

中心線平均粗さ(Ra) :0.4a~3.2a
最大高さ(Rz) :1.6s~12.5s


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